2010年10月2日(土)
檜原村でマイナスイオンを浴びよう!

目的地 払沢の滝
ルート 環七 → 新青梅街道 → 五日市街道 → 都道33号 → 都道205号(神戸岩、払沢の滝) →
都道33号 → 都道31号 → 都道184号 → 圏央道(日の出インター) → 中央道 → 国道20号
走行距離 202km

あるウィークデイの午後、場所は会社の会議室だ。外は文句なしの晴天。会議室の窓からブラインド越しに差し込む日の光が、鋭利な刃物のような輝きを放っている。
あくびを頻発し、見るからに睡魔と格闘している感じの正面の会議出席者が、ペットボトルの蓋を開けて紙コップにお茶を注いだ。その小さな水音は、俺に山間の渓流を想起させた。
唐突に俺の魂は会議室を離れ、森の中に現れた。深い緑の木々に囲まれた森の道でバイクに跨り、のんびりと移動していた。やがて清流にかけられた小橋に差し掛かり、俺はバイクを停めてウェストバッグからカメラを取り出す。小橋の下の、清楚で可愛い水の流れにカメラを向ける。一枚撮り、少し角度を変えてもう一枚。カメラをウェストバッグに戻して顔を上げる。見ると小橋の手前に、この道から分岐した小道が小川沿いに上流に続いている。道は舗装されていて、どうやらバイクで入って行けそうだ。
俺は少し考え、跨ったまま地面を蹴ってバイクをバックさせる。小川沿いの小道に向けてハンドルを切れる位置までバックして、その小道に分け入る。森は一層深くなり、想像の中の俺は木漏れ日を浴びながら、ゆっくりバイクを走らせる。そして清流の音を聴き、森の香りを嗅ぐ。

分析するに、海岸線や高原みたいな開けた場所をのびのびと走りたいと感じる時は、俺の場合恐らく身も心も元気な時だ。深い森の中に身を置きたいと感じるようなとき、それは精神的に少し疲れているときなのではなかろうか。

それはともかく、俺は木々の深い緑や渓流を眺めたくなり、ツーリングマップルで目的地を検討した。そして決定。多摩川の支流、秋川の上流部の村、檜原村の辺りを走り回ることにした。檜原村は東京都唯一の村(島除く)で、都心から近いとはいえ今なお自然豊かで、森と清流の山間の村なのだ。


そして週末の朝。4時に起床して4時50分に出発した。
環七のセルフスタンドで給油して、丸山陸橋の下を右折。新青梅街道、千川通り、青梅街道を経由して五日市街道を西進し、国道16号を超えてコンビニに入った。本日の朝食はランチパックのピーナッツに、ふた付き缶のブラックコーヒー。甘いパンと、ブラックコーヒーの組み合わせが大人の味だ。(ばか?)

駐車場で朝食を食べつつ休憩していると、少し前に追い越したロードバイクのおじさんが駐車場に入って来た。おじさんは、俺の近くに自転車を停めてコンビニに入って行った。小さいコンビニ袋を持ってすぐに出てきて、自分の自転車の近くで缶ジュースを飲んで菓子パンを食べた。そして俺に向かってこう言った。
「ゼファーですね」
「はい」俺は答えた。
「私もバイク乗ってるんですよ。CB1300ー」
そのおじさんはCB1300と言う時、なぜかせんさんびゃくのくをくーと伸ばして発音した。
「へー、大きいのに乗ってるんですね」
「ええ、まあ・・・自転車は健康の為ですけどね!」そう言っておじさんは自分のお腹をポンポンとたたき、「がはははははっ!」っと大声で笑った。俺はビクッとなった。びっくりするほど無意味に大きな笑い声だったからだ。俺もなんとなく「あははははは・・・」と調子を合わせたが、はっきし言って、面白くもなんともないのであった。

五日市街道から都道33号に入り、警察署を超えると道は急激に田舎道になり、道の両側の緑が濃くなっていった。十里木の交差点を超えて秋川沿いに進み、あきる野市から檜原村に入った。

檜原村役場の先のT字路を右に折れて都道205号に入り、道端にゼファー750を停車。檜原街道(都道33号)を離れると、とたんに往来する車がいなくなった。俺はネジブタを開けてブラックコーヒーを飲み、ツーリングマップルを眺めた。つかの間休憩し、この先の神戸岩目指して発進したのだった。

都道205号から案内版に従って右折。キャンプ場をいくつか超えて進み、神戸岩に到着。道が広くなっている場所にゼファー750を停め、エンジンを停止してバイクから降りた。
神戸岩は、神戸川上流にある高さ約100m、幅約140mの大岩壁で、最近では隠れたパワースポットとして知られ(隠れてるのか知られてるのか、どっちだよ)、テレビでもちょくちょく取り上げられている。峡谷はジュラ紀に属する角岩層からなり、岩石が特に堅硬であるために形成されたらしい。

俺はシートに跨って再びエンジンを始動し、サイドスタンドを蹴り上げて発進した。神戸隧道というトンネルを通って、大岸壁の裏側に行って見ることにしたのだ。石造りの古めかしい小橋を渡り、岸壁に穿たれたトンネルというよりは洞窟に侵入し、そしてすぐに後悔した。真っ暗!ゼファー750のヘッドライトでは太刀打ちできないような闇がそこにあり、しかも道が悪い。トンネルの内壁は、無造作にくりぬかれたデコボコの岩盤で、天井から湧き水のしずくが、ポツリポツリと垂れている。はっきし言って怖い。

不気味な暗闇の中を低速で慎重に進み、ようやく出口の明かりが見えた時の安堵感といったら・・・
それほど大した距離ではないのだが、暗闇の中を進む感覚は、永遠の無限大道に迷い込んだ心持ちだ。いやー、檜原村恐るべし!都心からこんなに近いのに、むちゃくちゃ秘境っぽいじゃないか!

岸壁の反対側は、特になんてことのない場所だった。俺は狭くて舗装の荒れた、傾斜のある山道で、必死になってゼファー750をユーターンさせ(もちろんテケテケターンだ)、根性を出してもう一度トンネルをくぐった。トンネルを抜けて岸壁の檜原村側に出ると、なんだかようやっと正常な世界に復帰した気分になったのだった。それ程までに、神戸隧道には不気味な雰囲気が漂っている。

神戸岩から都道205号を戻り、看板に従って小道を鋭角に右折。
午前7時30分。出発から81km走って本日の目的地、払沢の滝の駐車場に到着した。

ゼファー750を駐車場に停めてヘルメットをホルダーにロックし、俺は払沢の滝に向かう遊歩道に分け入った。遊歩道入り口の案内版によれば、ここから払沢の滝までの所要時間は徒歩で約10分だ。

道の左側には北秋川支流のせと沢が流れている。木々の間を縫って清らかな水が流れるその景観は、まさに絵に描いたような清流って感じだ。俺は安全な場所で川原に降り、淵の水をすくって顔を洗った。ものすごーく気持ちいい。

遊歩道をさらに歩くと、段々水の音が大きくなってきて、やがて深い森の木々の狭間に払沢の滝が姿を現した。なんとなく神々しいような威厳を感じさせる雰囲気だ。

俺は鎖を伝って岩を登り、できるだけ滝つぼに接近して滝を見上げた。上段の落ち込みは生い茂る木々で見えないが、木漏れ日を浴びた水流のしぶきが、きらきらと美しく輝いている。

払沢の滝は日本の滝百選に入る檜原村の滝を代表する名瀑だ。全4段でトータル60m、最下段(26m)の落ち込みにある深い淵はとても神秘的で、古くから大蛇が住むと伝えられている。厳冬期には美しく結氷することでも知られている。滝が僧侶の払子を垂らした様に似ている事から、かつては払子の滝とも呼ばれていたらしい。

俺は数枚写真を撮影して、カメラをウェストバッグにしまい、深呼吸をして森の空気を肺に満たした。

もはや本日のテーマ「檜原村でマイナスイオンを浴びよう」は、充分達成したように思われる。俺は遊歩道を歩いてゼファー750の側らに戻り、払沢の滝の駐車場を後にしたのだった。

こんにちは、道明寺司です。

それはさて置き、払沢の滝を後にして檜原街道を戻った。まだ時間が早いので、秋川街道や都道184号の日の出町の辺りを意味もなく走り回りった。信号が少なく、交通量が少ないのでいい気分だ。

日の出町のつるつる温泉で風呂に入ろうと思っていたのだが、営業時間の前から人が沢山ならんでいたのでやめにして、日の出インターから圏央道に乗ったのだった。

すいている圏央道を快走して、八王子ジャンクションで中央道に入った。中央道に入った瞬間から反対の下り車線は渋滞していた。かたや、俺が走行する上り車線は超快適。圏央道と中央道の料金1,250円払って八王子料金所を通過。下り車線は相変わらず大渋滞だ。俺は順調に走行し、石川PAにゼファー750を入れた。

そしてこれ!パーキングエリアのかき揚げうどんだ!(まただよ)
石川PAのかき揚げうどんは、黒々としたつゆといい、チープなかき揚げといい、まさに俺好み。100点満点のかき揚げうどんなのだ。

100点満点の、グレートなかき揚げうどんを食べて石川PAを出発。順調に走行して高井戸で一般道に降り、国道20号と混雑している環七を走った。

午前11時45分。出発から202km走って、無事に帰宅したのであった。


檜原村は都心から近いのに、すごーくいい感じの山間の集落って感じの場所だ。今でこそ交通機関や道路が発達して、都心から2時間足らずで到着できるが、昔は本当の意味で秘境だったらしい。人は古く(縄文時代)から住み着いていたらしい。檜原村のそれぞれの集落には、多くの落武者伝説が残っていたりなんかして、今なお神秘的で魅力的な場所なのだ。

それはともかく、神戸岩の神戸隧道は本当に不気味だったわけだが、帰宅後インターネットで調べてみたらやっぱりだ。結構有名な心霊スポットらしい・・・(ひえ〜〜)。何にも憑いてきてませんように・・・


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