2010年7月14日(水)〜7月18日(日)
北海道!!!

目的地 北海道

ルート
1日目 :  (羽田空港)→(新千歳空港)→ 道道130号 → 国道36号 → 道道45号 → 国道234号 → 国道12号 →
道道116号 → 国道452号 → 道道135号 → 国道38号 → 富良野「ニュー富良野ホテル」(165km)

2日目 :  国道237号(彩香の里、ファーム富田) → 道道291号(十勝岳) → 道道966号(青い池) → 国道237号 →
道道68号 → 道道37号 → 道道140号 → 道道3486号 → 国道39号 → 国道273号 →
層雲峡「朝陽亭」(173km)

3日目 :  国道273号(三国峠) → 道道806号(ナイタイ高原) → 国道274号 → 国道38号 → 道道1117号 →
道道136号 → トマム(265km)

4日目 :  道道136号 → 国道237号 → 道道136号 → 道道610号 → 国道274号 → 道東自動車道 →
道央自動車道 → 小樽 → 国道5号 → 道道753号 → 余市「エーヴランドホテル」(236km)

5日目 :  道道753号 → 国道5号 → 札幌 → 国道36号 → 道道130号 →(新千歳空港)→(羽田空港)(145km)

走行距離 984km

今年も夫婦でタイミングを合わせて休みをとった。去年同様スカイツーリングの受付開始とほぼ同時に予約を行い、往復共に希望の便を確保した。かくして3回目の北海道ツーリングが決定し、ゼファー750で初の北海道上陸の運びとなったのである。
去年の北海道ツーリングは距離の判断を誤り、いささか余裕のないツーリングとなった。 なので今年は1日に走る距離を短めに設定して、のんびり観光しながらツーリングするつもりだ。

出発前日。いつも通り1日の仕事を終え、俺は強烈なワクワク感と開放感を味わった。家に帰り、エクセルで作った持ち物リストをチェックして最終的な荷造りを行い、風呂と食事を済ませて早めに就寝。6時間くらい寝て起きれば、今回で3回目の北海道ツーリング、その出発の朝だ。


■■ 初日 羽田空港〜新千歳空港〜富良野 ■■
5時起床。パソコンを起動して、出発前最後の天候チェックを行った。週間予報によれば、我々夫婦の回る地方は概ね曇りか晴れ。16日の金曜日は雨になるようだ。いずれにせよ、去年よりひどい天候になることはあるまい。

ゆっくり支度をして、6時40分に自宅を出発。道路が混む前に都心を走りぬけ、7時40分に羽田空港のガソリンスタンドに到着。スタンドが開く8時まで待ってガソリンを抜いてもらった。去年、一昨年とガソリンを抜いてくれた人、多分店長、が今年もガソリンを抜いてくれた。
今日の東京は曇り勝ちで風が強い。今朝出発前に見たテレビの予報によれば、関東地方は今週末に梅雨明けの見込みらしい。もっとも今日から週末を北海道で過ごす我々夫婦にとって、関東の梅雨明けは関心の外のできごとだ。

ガソリン抜き取り完了。
続いて西貨物エリアのANAの事務所に移動して、バイクを空輸するために必要な書類に記入した。航空貨物の事務所からバイクを預ける場所に移動し、バイクの傷のチェック。係りの人が右のマフラーと、右エンジンガードの傷を書類に書き込んでいた。5月に行った車山ツーリングで、たちゴケしたときの傷だ。大勢の観光客のなかでコケ、顔から火がでる位恥ずかしい思いをした、苦ーーーい思い出の傷なのだ!(どうでもいいよ)
続いて荷物のチェック。バイクに括り着けた荷物を一旦降ろし、係りの人に中身を見せて、危険物がないことを確認してもらう。最後にバッテリー端子を取り外した。あーめんどくさい!(輸送中に絶対エンジンが掛からないようにする為らしい)

とは言え、ANAのスカイツーリングによる北海道ツーリングも今回で3回目。バイクの搭載手順や、空港内の迷路のような道にも大分慣れてきた。我々夫婦は必要な手続きをテキパキとこなし、ANAの航空貨物にバイクを預けて旅客ターミナルに向かった。西貨物エリアから旅客第2ターミナルまで、空港内循環バスでおよそ5分。料金は100円だ。

空港内のレストランで、ゆっくり朝食を食べて時間をつぶした。スカイツーリングのバイク搭載手順の時間的制約、例えば、ガソリン抜き取りは搭乗便出発時間の2時間30分前まで、西貨物エリアでのバイク搭載手続きは2時間前まで、に従うと時間が余るのだ。

やがて我々夫婦とバイク2台が搭乗する全日空61便新千歳空港行きの出発時間が近づき、我々夫婦は搭乗口に向かった。保安ゲートで2度ブザーがなり、エンジニアブーツを脱いで、ベルトをはずして通過。搭乗口の無秩序な行列に並び、予約票のQRコードを読み取り機にかざして乗り込んだのだった。

我々夫婦とゼファー750とビラーゴを乗せた全日空61便は、定刻通りに羽田空港を出発して、ほぼ定刻通りに新千歳空港に到着した。

ああ、北海道!
やって来たというよりは、1年ぶりに帰って来たような感覚だ。

旅客ターミナルから20分歩いて貨物エリアに向かった。かみさんは、「ケロケロー、ケロー!」と大声を発しながら、飛び跳ねるように歩いた。韓流ドラマ(天国の扉)の一シーンを再現しているようだ。(どうでもいいって)
出発前にチェックした予報では、今日の空知地方は晴れのはずだが、空一面どんよりと曇りいつ降りだしても不思議ではない気配だ。貨物エリアに到着する頃には、実際に細かい雨が降り出した。我々夫婦は落胆しながら、ANAのエアカーゴ事務所を訪れ、輸送中にバイクに傷がつかなかったか確認して、書類にサインした。そしてゼファー750とビラーゴを引き取り、バッテリーの端子を取り付けた。

細かーい雨が降ったり止んだりしていたが、俺はレインスーツを着けずに走り始めることにした。かみさんは雨対策というよりは、むしろ防寒のためにレインスーツの上着だけ着用した。貨物エリアを後にし、ANA指定のガソリンスタンドで給油。パック料金に含まれるガソリン5リッターの残りを現金で支払って、ゼファー750とビラーゴのタンクを満タンにした。

さて、晴れていようが、小雨がぱらついてようが、我々夫婦の北海道ツーリング2010のスタートだ!

道道130号から国道36号を札幌方面に少し走り、道道45号を右折。今年初のセイコーマートだ。
我々夫婦は二人ともセイコーマートが大好きだ、安いし、パンやお惣菜は美味しいし、珍しいものがいっぱいあるし、なにより、北海道に来た!って気分になるからだ。おお、セイコーマート!今年もお世話になります!!って感じだ。

新千歳空港を出発して、札幌から遠ざかり始めるとすぐに道の両側には、北海道らしい広々とした景色が広がった。ぱらついていた小雨はすぐに止み、今や雲の切れ目にうっすらと青空が顔を出している。
道道45号、国道234号、国道12号と走り継ぎ、本来右折予定の道道116号を少し超えて、道の駅「三笠」で休憩。もはやこの辺りでは、すっかりいい天気だ。時刻は14時位。ここで遅めの昼食にしようと思っていたのだが、食堂は準備中だった。しかたないので、フランクフルトとソフトクリームを買って腹の足しにした。今回のツーリングで、まず一つ目のソフトクリームだ。ソフトクリームは普通だったが、フランクフルトがやけに美味しかった。腹が減っていたせいか?いや、そればかりではあるまい。

道の駅を出て改めて道道116号を走り、桂沢湖のあたりで国道452号(夕張国道)に入って北上。道以外に人工物のない、鬱蒼とした森の中を走る。鹿の標識と、ヒグマの標識が交互に現れる。交通量は極めて少なく、たまに対向車とすれ違うくらいだ。こんな場所で前方にヒグマを発見したら、びっくりして立ちゴケして、まごまごしている間に襲われること請け合いだ。はっきり言って怖い。

夕張国道から国道135号を右折して暫く走り、富良野市に入って国道38号を右折。道道800号の手前で再び、我々夫婦はセイコーマートの駐車場にゼファー750とビラーゴを乗り入れた。本日の宿は素泊りなので、100円惣菜やパンを買って今日の夕食と明日の朝食にするのだ。

今晩と明朝の食料を確保し(かみさんはいつものように、スナック菓子を大量に確保した)、道道800号を富良野スキー場方面に進んだ。

午後5時30分。
出発から165km走って本日の宿泊地、東京都足立区の我が家から千数百キロ彼方の「ニュー富良野ホテル」に到着だ。

ニュー富良野ホテルは、ツインの素泊りで一人¥5,800(楽天トラベル)。この時期の富良野は宿の予約がとりにくく、そして高い。ラベンダーが美しい季節だからだ。

部屋に入って旅装を解き、部屋のシャワーを浴びて(ニュー富良野ホテルには大浴場がない)宴会開始。セイコマの100円惣菜や、大おにぎりを食べながらサッポロクラシックを飲んだ。大きな宿のバイキングや、洒落たホテルの豪華ディナーもいいけれど、これはこれで楽しい。

ローカル放送の予報によれば、明日の朝は雨。しかし徐々に回復し、午後からは好天が期待できるようだ。

■■ 2日目 富良野〜十勝岳〜層雲峡 ■■
雨が止んでから出発するつもりで、遅めに起きた。・・・・・はずだったわけだが、曇り空ではあるものの雨は降っていなくて、降った形跡もない。だがまあ、それはそれでありがたい。

セイコマで買った朝食用のパンを食べて、ゆっくり支度をした。そしてチェックアウト。かみさんは今回のツーリングに、観光用のスニーカーとバイク走行用のブーツを持って来ている。今日のツーリングは富良野観光から始まるので、スニーカーで出発するつもりでいたようだが、気が変わったようで一度荷物に括り付けたブーツを引っ張り出した。スニーカーを脱いでブーツを履き、脱いだスニーカーを荷物のネットに放り込んだ。

かくして出発準備が整った。駐車場の一角にあるバイク置き場(さすがは北海道だ)からゼファー750とビラーゴを引っ張り出してまたがり、エンジンをかけてサイドスタンドを蹴り上げた。
俺は無線インカムでかみさんに確認した。
「準備OK?」
「OK!」
「よし!出発!」

という感じで、北海道ツーリング2日目のスタート。国道38号を少し走って国道237号を左折し、セルフのホクレンで給油。国道237号を中富良野方面に少し走ると、「彩香の里」の看板があったので、それに従って進んだ。

すぐに「彩香の里」の駐車場に到着。駐車場には「涙ぐむ目」という題名の花壇があり、せっかくだからその真ん前にゼファー750とビラーゴを停車した。
かみさんはそそくさとバイクを降り、ブーツをスニーカーに履き替えて観光モードとなった。なんだか忙しそうだ。

駐車場から「彩香の里」の丘を見上げると、ラベンダーに埋め尽くされた紫色の斜面が広がり、その向こうを今や晴天となった鮮やかな色の青空が覆っている。なんつーかメルヘンなわけだが、大声で飛び交う中国語がせっかくの雰囲気を台無しにしているのであった。いやー、北海道は中国人観光客多し。今年から中国では、国外旅行の制約が緩和されたらしいしから、尚更なのかもしれない。

我々夫婦はラベンダー畑を散歩した。「彩香の里」は深川栄洋監督、中村雅俊、原田美枝子主演の映画「60歳のラブレター」のロケに使われたらしい。

続いて「ファーム富田」。ここで茹でたトウモロコシを購入し、富良野メロンとソフトクリームを食べた。今回のツーリングで2回目のソフトクリームだ。
「ファーム富田」にはセグウェイのコースがある。かみさんと「乗ってみようか」という話になり、見に行ってみた。コースではおじさんが二人セグウェイに乗って遊んでいた。で、我々夫婦はやめることにした。なんだかとっても恥ずかしそうな感じだったからだ。

駐車場にはツーリングのバイクがたくさん停まっていて、中国人観光客が満面の笑みを浮かべてバイクの写真を撮影していた。一体何がそんなに嬉しいのか・・・謎だ。

「ファーム富田」を後にして国道38号に戻り、道道291号を右折。十勝岳を目指して走る。やがて十勝岳温泉の駐車場に到着。霧が出ていて、残念ながら何も見えなかった。道道291号を少し戻ると、すぐに霧はなくなった。道道291号から道道966号を右折。「北の国から '98 時代」で有名になった「吹上露天の湯」(雪景色の中でシュウと五郎さんが入り、あとから中畑のおじさんと新吉さんが入って来て誤解される、あの露天風呂だ)を超え、「十勝岳望岳台」に到着。

「十勝岳望岳台」は十勝岳の中腹にある展望台だ。目の前に活火山十勝岳の荒々しい山肌がそびえ、見下ろせば美瑛や富良野の美しいパノラマが広がる。1kmほどの遊歩道があるらしいが、我々夫婦は駐車場から雄大な景色を堪能して、次の目的地に向かうことにした。

望岳台から道道966号をさらに進む。道は森の中を右に左にカーブを繰り返しながら緩やかに下り、やがて前方の視界が開け、正面に現われるのは美瑛方面の大パノラマだ。

道道966号で白金温泉を超えると、道の右側に「青い池」の駐車場が見えてきた。俺は右のウィンカーを出し、おもむろに駐車場に向かって右折・・・と思ったら工事現場の入り口だった。無線インカムではかみさんが「ここじゃないよ!」と言い、警備員のおじさんが少し先の駐車場入り口を指し示した。俺は状況を把握してすばやく軌道を修正した。改めて青い池の駐車場に入り、係りのおじさんの指示にしたがってゼファー750とビラーゴを停めた。

駐車場から未舗装の小道を5分程歩くと、林の右側に「青い池」が見えて来た。白金の「青い池」は美瑛川・白金温泉地区の砂防工事によってできた水溜りだ。硫黄沢川から硫黄を含む湯が流れ込んでいるために、乳白色で青色の池が出来上がったらしい。水没して立ち枯れしたカラマツ林が青い水面から突き出て、幻想的な雰囲気に拍車をかけている。

「青い池」の駐車場を出て道道996号を暫く走り、美瑛駅のすぐ近くにある道の駅「びえい」に入った。道の駅と隣接する宿泊施設のレストランで昼食。俺は焼きカレー、かみさんはジャガイモのニョッキのグラタンセットを食べた。サラダバーのトマトがすごーくうまかった。

天気は、快晴。グングン気温が上がってきた。北海道でこんなに暑い思いをするのは、多分はじめてだ。

美瑛駅のあたりで再び国道237号に出て、旭川市街を避けて道道68号、道道37号、道道140号、道道1122号を走り継ぎ、国道39号の手前の道の駅「とうま」で休憩。今回3本目のソフトクリームを食べた。かみさんに言わせれば、ここのソフトクリームは歴代3位のおいしさだったらしい。

国道39号(大雪国道)をひた走り、宿泊予定の層雲峡に向かった。上川のあたりのガソリンスタンドで給油し、層雲峡温泉手前のセブンイレブンでおやつとジュースを購入した。

午後4時。今朝富良野を出発してから173km走って、本日の宿泊地、層雲峡温泉「朝陽亭」に到着だ。

とりあえず車寄せにゼファー750とビラーゴを停車し、フロントでバイクを停める場所を確認した。フロントの人が外に出てきて、「ここに停めてください」と入り口脇の軒下に案内してくれた。我々夫婦はゼファー750とビラーゴを雨露のしのげる軒下にいれ、ゴムロープを解いて荷物を降ろした。大量の荷物を手分けして持ち、再びフロントに行ってチェックイン。食事や大浴場の説明を受けて部屋へ向かったのだった。

部屋は最上階、6畳くらいの畳の間と、ツインのベッドルームが一緒になった和洋室だ。窓からは宿のきれいな中庭や、層雲峡周辺の山々が見渡せる。層雲峡温泉「朝陽亭」は北海道の温泉街にありがちな巨大温泉ホテルで、ANAのスカイツーリングのパックで選べる宿の一つだ。

我々夫婦は大浴場でツーリングと観光の疲れを癒した。ビール(札幌クラシック)やジュースを飲み、セブンイレブンで買ったおやつを食べながら寛いだ。

夕食はビュッフェ。
種類は豊富だが、味はあまりよくなかった。しかし我々夫婦は、ビュッフェが大好きだ。ステーキ、ザンギ、ベーコン、サラダ、と言った料理を持って来て、ビールやジュースを飲みながら平らげたのだった。

・・・・ って、おまえはアバターか!

それはさて置き、食後にもう一度温泉に入った。ここの大浴場は、我々夫婦の部屋と同じ階にあるので便利だ。部屋に戻って明日の行程の検討。ツーリングマップルでルートとスポットをチェックした。

天気予報によれば、明日も雨の心配はなさそうだ。明日は今回のツーリングのメインイベント、ナイタイ高原だ。

■■ 3日目 層雲峡〜三国峠〜ナイタイ高原〜トマム ■■
5時起床。
朝風呂に入って目を覚ました。ロビーに降りてフロントでサンダルを借り、宿の周りを散歩した。見上げれば、薄い雲の合間に青空がのぞき、時間の経過とともに雲の量が減りつつある。山間のさわやかな空気が、少しひんやりとしていい気持ちだ。

鹿!朝陽亭の脇の小道を降りていくと、なにげなくそこに立っていた。俺は立ち止まり、ポケットからデジカメをだして、静かにゆっくりと近づいた。鹿は落ち着いた風情で佇みながら、なんだこいつは?って感じで俺を見ている。俺は限界と思われるところまで鹿に近づき、ズームで鹿の写真を撮影した。もう少し近づくべくゆっくりと前進すると、鹿は逃げるでもなく、ゆうゆうと立ち去って行った。

中国語が飛び交う大食堂で朝食のビュッフェを食べ(おそらく宿泊客の3分の2は中国系だ)、荷物を担いでチェックアウト。

ゼファー750とビラーゴに荷物を括り付け、出発の準備をしていると、ツアーバスの出発待ちをしている中国人の宿泊客が一人、また一人とやって来て我々夫婦とバイクを見物し始めた。俺もかみさんも彼らと目を合わせないように、黙々と出発準備を進めた。目が合って何か話しかけられたら、なんだかすごーくややこしいこ事になりそうだからだ。見物の中国人はだんだん増えてきて、今や沢山の中国人が我々夫婦を取り囲んでガン見している。大声でなにやら「スズーキ!スズーキ!」と言っているわけだが、我々夫婦のバイクはカワサキとヤマハだ。スズキのスの字もない。

それはともかく、我々夫婦は大急ぎで作業を進め、ようやく出発準備が整った。暖気運転もそこそこに無線インカムでかみさんに「OK?」と聞いた。かみさんが「OK!」と言うやいなや、我々夫婦はサイドスタンドを蹴り上げ、尻に帆かけてこの異常な状況から離脱したのだった。

ああ、びっくりした。我々夫婦は国道39号を少し走り、大雪湖の辺りで国道273号の分岐を右に入った。そしてゼファー750とビラーゴを道端に停車して、あらためて一息ついた。

風はなく、陽光はすでにポカポカと暖かい。バイク2台のエンジンを停止した瞬間、東京では決して味わえないような静寂が我々夫婦を包んだ。

国道39号との分岐から国道273号を10数キロ走ると三国峠だ。

三国峠は、北海道上川郡上川町と河東郡上士幌町とを結ぶ峠で、最高地点の標高は1,139mだ。自動車が通行可能な北海道の峠としては最も高いところにあるらしい。峠付近からは広大な手付かずの森を俯瞰で見渡すことができる。そのだだっ広さたるや、物凄い迫力だ。我々夫婦は感銘を受け「いやー、北海道は奥が深いねー!」とか会話しながら、何処までも広がる森の中の道を進んだ。

国道273号(糠平国道)を南下して糠平湖畔を通過。湖畔と言っても鬱蒼たる木々の為、道路から湖は見えない。
上士幌町の市街地に差し掛かり、道道806号を右折。我々夫婦はゼファー750とビラーゴを道端に停車し、荷物から冬用のジャケットをを引っ張り出して着用した。雲が出てきて気温が下がったようで、急に寒くなってきたからだ。

さて、今回の北海道ツーリングのメインイベント、ナイタイ高原だ。雲ってきちゃったのが残念だが、しかたがない。道内でも有数と言われる、高原の展望を満喫しよう。雲っていようが、急に気温がさがろうが、テンション上げて行くぜ!

と思ったら、すぐにまた晴れて来た。あー良かった!
我々夫婦は道道806号を暫く進み、ナイタイ高原牧場レストハウスの看板がある交差点を左折した。

道に撒かれた石灰(口蹄疫対策だ)を踏み越え、木々のまばらな緩やかな登りを走る。道は大きく弧を描いて右にカーブしつつ、尚も緩やかに登ぼって行く。今や両脇の木々は無くなって視界をさえぎる物はなく、道の右側には草原地帯、左側には濃い色の青空が広がっている。

やがて道は下り坂に差し掛かり、圧倒的に美しい光景が眼前に現われる。と言うよりもむしろ、その光景に我々夫婦は包まれる、と言った方がおそらく正しい。右にも左にも、前にも後ろにも、美しい丘が連なる草原地帯が限りなく広がっている。道は大草原を左右に切り裂いて、穏やかに湾曲しながら前方に伸びて行く。どこまでも青い空と、どこまでも緑の草原。そのど真ん中に我々夫婦はいる!
無線インカムでかみさんが聞いていようがいまいが、俺はヘルメットの中で声を上げずにいられない。
「すげーーーー!」

以前バイク雑誌で、「ナイタイ高原はバイク乗りの為の道だと思う」っていうコメントを読んだことがあるが、まさしくその通りだと思う。好天の日にこんな道を走れるなんて、バイク乗り冥利に尽きるってもんだ。

やがてナイタイ高原展望台の駐車場に到着。
よくバイク雑誌に載っている、オブジェのような岩と一緒に記念撮影。

そしてこれ。かみさんにとっては、多分こっちが本命。今回のツーリングで4つ目のソフトクリームだ。我々夫婦は「ナイタイ高原牧場レストハウス」に行き、牛乳とソフトクリームを買った。ここのソフトクリームは美味しいと評判なわけだが、果たしてお味は如何に。かみさんは「どれどれ・・・」とかいいながらソフトクリームの先端を一口食べ、「美味しい!」と言った。この瞬間ナイタイ高原のソフトクリームは、フラノーブルマツオのソフトクリームを抑えて、かみさんランキングの1位に躍り出た。

おお、ナイタイ高原!
我々夫婦にとって、100点満点のツーリングスポットなのであった。

さて、昼食だ。帯広まで行って豚丼を食べる予定だったのだが、もうお昼だし、おなかが空いたので士幌町の道の駅「ピア21しほろ」で済ませることにした。
俺は豚丼、かみさんは豚丼とそばのセットを食べた。味は、まあ普通だ。一昨年に「しらぬか恋問」で食べた豚丼の方が美味しかった。

ともあれ、豚丼と豚丼セットを平らげて店を出て、道の駅の隣りのホクレンで給油。人もバイクも燃料満タン。さあ、ツーリング続行だ。

国道241号を少し戻り、国道274号を左折。17km続く直線道路を我々夫婦は「どんだけ真っ直ぐなんだよ!」とか会話しながら走った。十勝川を越えて国道38号を右折。狩勝峠を超え、根室本線と並走して暫く走り、道の駅「南ふらの」に到着。

道の駅「南ふらの」には物産センターがあり、かみさんが「行ってみたい」と言ったので来てみたのだ。しかし、なんつーか、普通のしょぼいおみやげ屋さんだった。
しかたないので、今回のツーリングで5つ目のソフトクリームを購入。味はまあ普通だった。

道の駅「南ふらの」を出発して、国道274号を戻る。道道1117号を右折して道なりに道道136号を走り、トマム駅のあたりで「トマムの森」の看板がある道を右折した。

午後4時。
今日の朝、層雲峡そ出発してから265km走って、本日の宿泊地「アルファリゾートトマム ザ・タワー」に到着だ。

我々夫婦は駐車場の空いているスペースにゼファー750とビラーゴを停め、荷物をほどいて手分けして持った。フロントまでの長い道のりをヒーヒー言いながら歩き、ようやくたどり着いてチェックインを行った。部屋に入って速攻でシャワーを浴び、売店でフラノビール(コクがあってうまい)、ジュース、オヤツ等購入。道中にセイコーマートで買っておいたお惣菜やオヤツと合わせて、スペシャル豪華な大宴会を繰り広げたのであった。

明日は夕張から高速道路に乗って移動し、小樽を観光して余市で宿泊する予定だ。ローカル放送の天気予報によれば、明日も雨の心配無し。このまま最後まで持ちますように・・・

■■ 4日目 トマム〜小樽〜余市 ■■
4時30分に起きようと思っていたのだが、5時まで寝てしまった。トマムには雲海を見ることができる、「雲海テラス」という場所がある。そこに登るゴンドラが5時運転開始なので早起きしようと思っていたのだ。我々夫婦は速攻で支度をして一階に降り、5時30分くらいの循環バスで、ゴンドラ駅のあるビジターセンターに向かった。

ビジターセンターに到着すると、既にゴンドラに乗るための行列ができていた。我々夫婦は行列の最後尾に並んで順番を待ち、料金(一人1,500円(高っ!))をはらってゴンドラに乗ったのだった。

ゴンドラに10分位(多分)乗って、雲海テラスに到着。雲海を見下ろすどころではなく、雲海テラスは濃霧の中で、全く眺望がない。お金と時間の無駄遣だった訳だが、ま、何事も経験。一回やっておけば気がすむのだ。
トマムには今後も宿泊するだろうが、雲海テラスに来ることはもうないであろう。
かみさんは雲海テラスから直接出せる絵葉書を、自分宛に送っていた。

ビジターセンターからザ・タワーまで遊歩道(熊がでそうで怖い)を歩いて戻り、朝食・・・と思ったら、レストランはどこも大混雑していた。我々夫婦は朝食難民となり、長距離を歩行して別の建物に行き、どうにかビュッフェの朝食にありついたのだった。朝食を食べ終わった時点で時刻は8時前。朝から1日分の体力を使ってしまった感じだ。

部屋に戻ってテキパキと支度を終え、エレベーターで1階に降りた。かみさんはフロントでチェックアウト。俺は荷物の積載の為駐車場に向かった。トマムのザ・タワーは建物から駐車場まで距離があるので、大荷物を担いで歩くのがしんどい。

北海道ツーリング4日目の出発準備完了!我々夫婦は8時45分にアルファリゾートトマムを出発したのだった。

道道136号から国道237号に出て、道の駅「しむかっぷ」で休憩。休憩が必要なほど走った訳ではないが、過去2回の北海道ツーリングではいずれもここで休憩したから、今回もなんとなく休憩してみたのだ。(思い起こせば、去年のこのあたりは大雨だったなあ・・・)

道の駅「しむかっぷ」から道道136号と道道610号を走り、国道274号を右折して石勝樹海ロードを走る。反対車線を次から次へと現われるバイクにピースしながら進み、夕張から道東自動車道に乗った。現在千歳東から夕張の区間は無料なので、反対車線の夕張出口は大渋滞していた。

「キウスPA」でトイレ休憩。道東自動車道は片側一車線だし、北海道のドライバーはみんな飛ばすので、煽られるのではないかと危惧していたが、幸いに前方に観光バスがいたので楽に走行することが出来た。

千歳恵庭Jctから道央自動車道に入り、今や片側2車線となった左側車線を順調に走る。輪厚PAでゼファー750とビラーゴに給油。札樽自動車道を走って終点の小樽で降りた。

道道17号を進み、南小樽のオルゴール堂の近くにゼファー750とビラーゴを停めた。
本日第一の目的地、かみさんにとっては今回のツーリングのメイン、小樽の「ルタオ」に到着だ。

俺はチーズケーキが大好きだ。だから俺にとって小樽のルタオは、オタルのルタオかルタオのオタルかっていうくらいの、小樽のルタオだ。(意味が全く分からん)
それはさて置き、我々夫婦はドゥーブルフロマージュの大本山、小樽のルタオ本店に入り、2階のカフェのテーブルに着いた。俺はもちろんドゥーブルフロマージュとコーヒーのセット、かみさんは、なんとかショコラとアイスコーヒーのセットを注文し、のんびりと北海道スイーツを満喫したのだった。

おみやげにショコラド小樽っていうチョコを買って、ルタオ本店を出た。

南小樽を後にして道道17号を少し進み、小樽港沿いの市営駐車場にゼファー750とビラーゴを停めた。バイクは1台200円、小樽付近は無料の駐車場がないのだ。

徒歩で小樽観光。小樽運河や、運河倉庫を見て回った。観光客が沢山いて、運河の橋の上では、人力車の車屋さんが客引きをしていた。
快晴で気温が高く、歩くと暑い。

昼食は、運河倉庫の「北海あぶり焼き」。かみさんが観光雑誌でチェックした店だ。店の中は以外にすいていた。というか、我々夫婦の他には客がいなかった。案内されて席に着き、すぐに理由を理解した。テーブルにはグリルがあって炭が炊かれていて、店内は灼熱地獄だ。こりゃー、夏に食うもんじゃないなって感じだ。俺もかみさんも失敗したなーと思ったが、「やっぱやめます」って言って店を出るのも気が引けるので、ホッケ、生鮭、あわび等の魚介類と、ジンギスカン鍋を注文した。やはり北海道では、一度はジンギスカンを食べなきゃいかん。

やがて魚介類やジンギスカンが運ばれてきて、我々夫婦は顔を真っ赤にしながら焼いて食べた。ジンギスカンはあまり美味しくなかったが、ホッケや生鮭は激うま!灼熱地獄に耐えた甲斐があった。

我々夫婦は小樽を後にした。道道17号から国道5号の海沿いを走って余市市に入った。余市駅の交差点を右折して国道229号を少し走り、ニッカウィスキーの工場を超え、道の駅「スペースアップルよいち」の駐車場に入った。

道の駅「スペースアップルよいち」には、余市宇宙記念館「スペース童夢」や農産品直売所、無料体験コーナーなどがある。宇宙記念館は余市出身で日本人初のNASA宇宙飛行士、毛利衛さんにちなんで建造されたらしい。
我々夫婦は、売店で余市のサクランボを買い、トイレを済ませて出発したのだった。

国道229号を戻て国道5号を少し走り、道道753号を左折。暫く走って堂々36号を左折すると本日の宿が見えて来た。
午後3時50分。今日の朝、トマムを出発してから236km走って、本日の宿泊地「エーヴランドホテル」に到着だ。
エーヴランドホテルはゴルフ場が隣接するリゾートホテルだ。外見はまるでお城のよう。入り口脇には、北島三郎寄贈の巨大な瑪瑙(めのう)が飾られている。

とりあえず大浴場で汗を流した。まだ時間が早いので、ビールを飲んで昼寝。気持ちよーく一眠りして、ホテルのレストランに向かった。本日のディナーはイタリアンのコースだ。パン、蛸と生ハムのカルパッチョ、パスタ、ピザ、伊達鳥のガーリックソテー、デザートが次々と運ばれてきて、我々夫婦はビールやカシスオレンジを飲みながら平らげた。

宿泊した部屋は豪華なつくりの広いツインで、一泊二食付で一人9,800円。大浴場のお風呂は温泉だし、食事は美味しいし、すごくリーズナブルだと思う。

明日はとうとう、最終日。
曇り後雨の予報なので、早めに宿を出て、降られる前に新千歳空港に到着したい。

■■ 最終日 余市〜札幌〜千歳〜羽田 ■■
7月18日、日曜日。5時30分に起きて朝風呂に浸かった。とうとう北海道ツーリングの最終日だ。

夜中に雨の音がしていたが既に止んでいて、空にはうっすらと青空が顔を出している。しかし今日の予報は雲り後雨だ。我々夫婦は早めに出発できるように、朝飯前に出発の支度を済ませた。

朝食はレストランのビュッフェ。野菜とパンが美味しかった。トマムのサラダもおいしかったが、ここのサラダも負けず劣らずだ。かみさんは大量の料理を持って来て、「急いでるのに、なにこんなに持って来てるんだ?あたし・・・」とか言いながら、急いで食べた。
ああ、美味しい朝食だった。我々夫婦は部屋に戻って荷物を担ぎ、ロビーに降りて速攻でチェックアウトしたのだった。

駐車場でバイクに荷物を括り付けていると、ホテルの従業員の男の人が近づいて来た。話によれば、この男性は愛知県出身で元バイク乗りらしい。
「今日はこれからどちらに向かうんですか?」と聞かれたので、俺は
「今日はもう帰らなくちゃならないんです。」と答えた。すると男性は、さながら卒業試験の結果を確認する学生の真摯さを持って、俺にこう尋ねた。
「北海道はいかがでした?」
俺の答えは、勿論こうだ。
「最高でした!」

荷物の積載が完了して、出発準備が整った。俺は無線インカムでかみさんに伝えた。
「じゃあぼちぼち行きますか?」
「オーケー!」
そして従業員の男性に頭を下げて挨拶し、「我々夫婦の北海道ツーリング2010」最終日の走行を開始したのである。

国道5号の海沿いを走って小樽を超え、国道5号を黙々と走った。天気は思った程悪くなく、降り出すまでに時間がありそうだったので、下道で行くことにした。

国道5号で札幌の中心部を突っ切り、札幌駅を越えて国道36号を左折した。北広島市の里塚、大曲までは混雑していたが我慢して進んだ。恵庭市に入る頃には道路の流れはスムーズになり、空模様が怪しくなって来た。
道の駅「花ロードえにわ」でトイレ休憩をとって出発。空はいっそう暗くなり、急激に空気がひんやりしてきた。もはや、いつ降り出してもおかしくない雰囲気だ。

国道36号から道道130号に入った。毎年この道が、北海道ツーリングのラスト走行。我々夫婦の北海道ツーリングは道道130号に始まって、道道130号に終わるのだ。

ANA指定のガソリンスタンドに到着。どうやら今回のツーリングでは、1回もレインスーツを着用しないで済みそうだ。
スカイツーリングのクーポン券をスタンドの人に見せてガソリンを抜いてもらい、抜き取り証明書をもらった。

ガソリンの抜き取りが終わり、新千歳空港の貨物エリアに移動。ANAの貨物受付に到着した瞬間、雨がポツリポツリと降り始めた。なんというラッキー!なんという完璧なタイミング!今年の北海道の天候は、最後まで我々夫婦の味方なのであった。これも日ごろの行いの成せる業か。(じゃあ、去年の大雨はなんだったんだよ)

傷の確認、危険物の確認、バッテリープラグの取り外しを行ってバイクを引き渡し、タクシーを呼んでもらって旅客ターミナルに移動した。

定番のラーメン道場で時計台のラーメンを食べ、時間をかけておみやげを買って時間を潰した。早めに搭乗口に移動して、ゆっくり休憩して出発時間を待った。

やがてANA68便の出発時間が近づき、我々夫婦は搭乗の列にならんだ。そして滑走路側の窓ガラスの向こう、北海道の空、北海道の大地をもう一度眺めたのだった。


北海道の道には、
淡い紫色に覆われた、ラベンダーの丘があった。青い水面から立ち枯れした赤松が屹立する、幻想的な光景があった。手付かずの森がどこまでも広がる、圧倒的な風景があった。大草原と青空が世界を二分する、広大な高原地帯があった。ソロキャンプツーリングの、ゼファー750乗りの女性がいた。おそろいのバイクでおそろいのウェアの、バリオス乗りの夫婦がいた。元バイク乗りだという、ホテルの従業員がいた。その男性は、うらやましそうに我々夫婦のバイクを眺めた。

毎年恒例となった、帰宅後の放心状態の中に我々夫婦はいる。
過去3回の北海道ツーリングの思い出は、どれも我々夫婦の宝物だ。濃い緑、淡い紫、手が届きそうな空、ピースサイン、俺、そしてかみさん。

今回のツーリングでは、常に青空が我々夫婦と共にあった。そのことに感謝。溢れる陽光を浴びて走る北海道は、優しく、美しく・・・・
既に我々夫婦は、北海道に戻りたくなっているのであった。


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