2009年7月15日(水)〜7月19日(日)
北海道!!

目的地 北海道
ルート
1日目 :  (羽田空港)→(新千歳空港)→ 道道130号 → 国道36号 → 道道46号 → 道道110号 →
国道275号 → 国道233号 → 留萌「ホテル神居岩」(205km)
2日目 :  国道232号(天売国道) → 道道106号(オロロンライン)→ 国道238号(宗谷岬)→ 国道275号 →
道道120号 → 「うたのぼりグリーンパークホテル」(330km)
3日目 :  道道120号 → 道道12号 → 国道275号 → 国道40号 → 名寄バイパス → 道道37号 → 道道68号 →
国道452号(美瑛)→ 国道237号(ジェットコースターの路) → 「リゾートイン・ノースカントリー」(274km)
4日目 :  国道237号 → 国道274号(石勝樹海ロード)→ 道道341号 → 国道453号 → 国道230号 →
「渓定山渓 万世閣ホテル ミリオーネ」(214km)
5日目 :  国道230号 → 国道453号 → 道道341号 → 国道36号 → 道道130号 →(新千歳空港)→
(羽田空港)(106km)
走行距離 1,129km

かくてその朝は訪れ、我々夫婦は目覚まし時計に頼らずに起床した。
それというのも、昨日はワクワクして熟睡できず、明け方早い時間から目が覚めていたからだ。

今年の北海道ツーリングも昨年同様、ANAのスカイツーリングだ。4月の受付開始とほぼ同時に予約を行った。去年はぎりぎりに予約して、希望する便がとれなかったからだ。
パックに含まれる宿一泊は帰路に付く前日の定山渓を予約し、走行ルートやその他の宿泊地は時間をかけて検討した。日程は4泊5日でメインは道北。オロロンラインを超えて宗谷岬に到達し、美瑛・富良野エリアを走り回り、北海道らしい広大な風景を満喫する。最終日前日は定山渓の宿に早めに到着し、温泉に入ってのんびり寛ぐつもりだ。

時は風に運ばれる真綿だ。予約から出発までの日々は当初ゆっくりと過ぎて行き、やがて徐々に速度を増し、最後の一週間は後方に吹っ飛ぶように過ぎ去った。そしてその朝は訪れ、さながら地中深くに根を張った大木のような日常を、あっけなく一蹴した。


■■ 初日 羽田空港〜新千歳空港〜留萌 ■■

4泊分の着替え、0円マップ、本、デジカメやB+COM等の充電器、防寒用に革ジャン、ウィンドストップインナー、フリース、俺用のももひき、かみさん用のタイツ。それらのものが既に、新しく購入したTANAXの防水バック2つ(これが今回のツーリングでは大活躍することになる)に押し込んである。二人分のレインスーツ、ブーツカバー、雨用グローブはかみさんのビラーゴに装着したサイドバッグの中だ。我々夫婦はゆっくりと身支度を整え、6時40分に自宅を出発した。

平日の朝。
通勤の車に混ざって都心を走りぬけ、羽田空港を目指した。

羽田空港内のANA指定のガソリンスタンドに到着。飛行機に搭載するために、ガソリンを抜いてもらうためだ。
時刻は7時50分。スタンドの営業時間は8時からだ。まだ入り口にロープが張られているので、我々夫婦はスタンドの脇にCB400SSとビラーゴを停車して待つことにした。

スタンドの事務所から従業員の人が出て来て「スカイツーリングですか?」と言った。去年もガソリンを抜いてくれた人だ。
「そうです」俺が答えると、従業員の人は「じゃあどうぞ」と言ってロープをはずしてくれた。我々夫婦はバイクをスタンドに乗り入れ、名前と搭乗する便名を告げてガソリンを抜いてもらった。CB400SSからはほとんど抜く必要がなかったが、ビラーゴからは結構な量のガソリンを抜いた。もったいないことだ。

続いてANAの貨物でバイクの搭載手続きと、コンテナへの組み付けだ。
我々夫婦は空港内の迷路のような道を去年の記憶を頼りに進み、西貨物エリアに向かった。
事務所で搭載手続きを行い、組み付け場所に移動してバイクの傷のチェック、計量、バッテリープラグの取り外しを行った。

時刻は9時前。
我々夫婦とバイク2台が搭乗するANA61便新千歳空港行きは11:00出発予定だが、スカイツーリングの場合、出発の2時間30分前にガソリンの抜き取り、2時間前にバイクの搭載手続きを行う必要があるのだ。
ちなみにガソリンの抜き取り(出発空港のスタンドから貨物受付、到着空港の貨物受け取りからスタンドまで移動するのに必要な量は残してくれる)と、バッテリープラグの取り外しを行わないと、バイクを飛行機に載せてくれない。ヘルメットは預かってくれないので、機内に持ち込む必要がある。

全ての手続きを終え、我々夫婦はCB400SSとビラーゴをANAの航空貨物に預けた。ヘルメットを入れた手提げ袋を持ち、空港内循環バスで第2ターミナルに移動したのだった。

第2ターミナルのレストランでゆっくり食事をして、出発ロビーに向かった。保安検査場に着き、金属探知機のゲートをくぐるとき案の定ブザーが鳴った。俺はおもむろにエンジニアブーツを脱ぎ、差し出されたスリッパを履いてもう一度ゲートをくぐった。今度はOKだ。去年もつまさきの鉄板が反応したので、今年は身構えながらゲートをくぐったのだ。

搭乗口近くでぶらぶらしていると、搭乗開始のアナウンスが流れた。我々夫婦は列にならんで機内に入り、無事に座席に着いた。
我々夫婦とCB400SSとビラーゴを乗せたANA61便は、定刻から10分程遅れて出発した。かみさんはすぐに寝る体制に入り、俺は持って来た文庫本を開いた。内容は全く頭に入らない。なぜなら俺は飛行機が苦手で、そこはかとなく緊張しているからだ。で、同じページの同じ行を、何回も何回も読み返した。俺は小説の内容をあきらめ、読んでいるふりをしてすごしたのだ。

快晴の羽田空港を離陸したANA61便は、墜落することもなく、ハイジャックされることもなく、曇天の新千歳空港に無事着陸し、俺の心配は取り越し苦労に終わった。(どんな心配してたんだよ)

我々夫婦は歩いてバイクを引き取りに向かった。約20分でANAの貨物センターに到着し、受け取り手続きをしてCB400SSとビラーゴを引き取った。千歳の天候は今のところ曇りだが、今朝東京で見た予報によれば、今日の北海道は全域で雨のはずだ。我々夫婦はレインスーツを着用して、雨用のグローブとブーツカバーを装着した。ANA指定のスタンドに移動し、スカイツーリングのパックに含まれる、ガソリン5リッターを給油。差額を払ってタンクを満タンにした。

かくして走行準備が整った。
「さて、行くか」俺はB+COMでかみさんに伝え、曇天の北海道に走り出した。
2009年7月15日午後2時25分。我々夫婦の北海道ツーリング2009のスタートだ。

道道130号から国道36号に出て札幌方面に走り、道の駅「花ロードえにわ」に入った。バイク乗りがいたら情報収集したかったのだが、一台もいなかった。我々夫婦はトイレを済ませ、暖かい缶コーヒーを飲んで出発した。

国道36号から道道46号、道道110号を経て国道275号を北上。既に道の両側には、北海道らしい風景が広がっている。広大な草原、赤い屋根の牧舎、牧草ロール。ああ、北海道だ!

国道275号に入ってから降ったり止んだりしていた細かい雨が、やがて本格的な雨となった。
我々夫婦は浦臼町のあたりで道の駅「つるぬま」に入った。考えてみると、羽田で食べた朝食以来何も食べていない。THE POOR & Poor's wife は空腹だ。何か食べようと思って売店に行ってみたら、たこ焼きしか売ってなかった。だからそれを食った。せっかく北海道なのに、ちょっと寂しい。

我々夫婦は道の駅「つるぬま」で、たこ焼きとペプシコーラの相性が抜群だという知見を得た。今回のツーリングで最初の収穫だ。(どうでもいいよ)

それはともかく7月中旬とは思えない寒さの中、石狩川沿いの空知国道を進んだ。平行して走る札沼線の於札内(おさつない)、南下徳富(みなみしもたっぷ)、下徳富(しもたっぷ)、 終点の新十津川(しんとつかわ)を超えて雨竜町に入った。

時刻は午後6時を越えている。このあたりで雨が止み、前方やや左の空が部分的に明るくなってきた。やがてその部分の雲が途切れ、空一面の濃い灰色の中にぽっかりと青空が現れた。沈み行く太陽に雲の切れ目が照らされ、幻想的な輝きを放っている。我々夫婦は、この光景に感銘を受け、「きれいだねー!」、「天気回復傾向かなー」と感嘆したり、楽観的なことを言ったりしながら進んだ。

碧水って言う交差点を左折して国道233号(留萌国道)に入り、すぐ右にあるセイコーマートに入った。今日の宿は朝食のみなので、ここで夕食の買出しだ。かみさんは、なにやら大量のスナック菓子を買っていた。もちろんちくわパンもゲットした。

夕刻から夜に切り替わる頃留萌のあたりに差し掛かり、我々夫婦は若干道に迷ったりしながら進んだ。

午後7時30分。
本日の宿泊地、「ホテル神居岩(かむいわ)」に到着だ。

駐車場のあいているスペースにバイクを停めて、レインスーツを脱いだ。レインスーツは既に乾いているので、ビラーゴのサイドバッグにそのまま突っ込んだ。雨の跳ね上げでドロドロになったバッグを下ろして雑巾でよく拭き、ようやくチェックイン。駐車場がほぼ満車だったので混んでいるのかと思いきや、どうやらほとんど日帰り入浴客のようだ。

「ホテル神居岩」は神居岩温泉の一軒宿で、留萌市内唯一の温泉だ。宿泊料金は朝食のみで一泊1人5,200円(じゃらんnet)だ。

我々夫婦は早速温泉に入ってさっぱりし、セイコーマートで買って来た豪華ディナーを楽しんだのだった。

本日の走行距離は、自宅羽田間を合わせて205km。明日は天売国道、オロロンラインを超えて宗谷岬に到達し、オホーツク海側を南下して歌登で宿泊する予定だ。

■■ 2日目 留萌〜オロロンライン〜宗谷岬〜歌登 ■■

5:00起床。
貸切状態の朝風呂(女湯もそうだったらしい)に入って目を覚まし、7時からの朝食前に出発の準備を整えた。

宿の朝食は和食ビュッフェで、おかずは焼き魚、つけもの、卵、海苔、サラダ、ひじきと油揚げの煮物などシンプルだが充分な種類が用意されている。我々夫婦は普段の朝食では考えられない量を食べて眠くなり、二度寝したくなったが根性でチェックアウトした。

俺はバッグをCB400SSとビラーゴに括り付け、出発の準備を整えた。かみさんは傍らで、訳の分からない踊りを踊っている。これから最終日まで繰り返されることになる、出発時のかみさんの踊りを、後に俺は「出発の儀式」と名付けた。かみさんはおそらく、道中安全祈願の踊りを神々に奉納しているのだ。(んなわけねーだろ)

さて、出発の準備が整った。
時刻は8時15分。空模様は薄曇り。昨夜のローカルニュースによれば、今日の道北は一日曇りの予報だ。

「ホテル神居岩」を出発して国道232号を進むと、すぐに日本海に出た。我々夫婦は日本海沿いの国道232号(天売国道)を北上した。細かい水滴がヘルメットのシールドに付くので、雨かと思ったら荒れた日本海の波しぶきだ。路の左側、ガードレールの向こうはすぐに海。車道の所々に、波が打ち寄せた後がある。ちょっと怖い。

出発してからあまり走っていないが、道の駅「おびら鰊番屋」に入った。予想以上に寒いので、革ジャンの上にレインウェアを羽織るのだ。ついでにトイレも済ませておこう。

「おびら鰊番屋」は、日本最北端の国指定重要文化財、旧花田番屋に隣接した道の駅だ。

旧花田番屋は、明治38年頃に建築され、道内で現存する番屋では最大の規模を有している。旧花田家は、当時雇い人が200人を超える大鰊漁家だったらしい。
道の駅から国道232号線をはさんで海側にはにしん文化歴史公園があり、北海道の名付け親、松浦武四郎翁の像が建っている。

引き続き天売国道を北上。
陸と海とが、勢力争いを行っているような景色が続く。
今までのところ、バイクが少なくてなんだか寂しい。それでもこの道で何台かのバイクとすれ違い、気持ちよく挨拶を交わしつつ進んだ。

羽幌のホクレンにCB400SSとビラーゴを入れ、ガソリンを満タンにした。後から地図を見ながら気がついたのだが、この近くに有名な「吉里吉里」があるようだ。すっかり忘れてた。残念!(ココパパさんの写真見たかったなー)

羽幌から20kmくらい進み、道の駅「ロマン街道しょさんべつ」に入った。我々夫婦はトイレを済ませ、オーバーパンツ代わりにレインパンツを穿いた。風が強くて、すごーく寒いのだ。7月の中旬だっていうのに。

後から3台のバイクが入って来て、我々夫婦のそばに停まった。その中の1人のライダーが大声で「楽しーなー!北海道走ってるってだけで楽しーなー!」と言った。いや、本当にそうだ。それは間違いない。たとえ分厚い雲が青空を隠していてもだ。

国道232号は、遠別川を越えて少し内陸に入り、多少風が弱まった。

そしてまたまた道の駅だ。我々夫婦は道の駅「てしお」に入った。今度は昼食のためだ。それと言うのも、この先稚内まで食事ができる店はなさそうだからだ。それを言うなら、この先、コンビニだろうとどんな店だろうとないはずだし、自動販売機だってないかもしれない。

我々夫婦は、レインジャケットを脱いで荷物のネットに括り付け、ヘルメットを持って道の駅のレストランに入った。かみさんはいくら丼を食べた。上陸して以来、初めての北海道らしい食事だ。俺に関して言えば、掻き揚げうどんを食べた・・・・・。そんなこと言ったって好きなんだからしょうがない。寒いし。(だからなにも言ってねーよ)

食事を終え、トイレを済ませ、もはや憂いはなくなった。さあ、オロロンラインだ!

道の駅「てしお」の脇を日本海の方に進み、突き当たりを右折して道道106号を走った。漁村の集落を抜けると道は再び海沿いとなり、右側には広大なサロベツ原野が姿を現した。

ほどなく我々夫婦は、巨大な風車郡に差し掛かった。オトンルイ風力発電所だ。
オロロンラインのこの場所は、よくバイク雑誌で紹介されている。だから写真では何回か見たことがある。写真を見たり紹介記事を読んでも、正直言ってここの景色にはあまり興味を抱いていなかった。しかし自分がその場で風景の中に身を置いたとき、俺の考えは覆った。
この雰囲気を、俺のコンパクトデジカメとへたっぴな撮影技術で伝えるのは論外だし、文章で表現するのも無理だ。しかし、今回の北海道ツーリングで我々夫婦は、オトンルイ風力発電所の景観に大きな感銘を受けた。故にどうにかがんばって、無理やりながら表現してみることにした。こんな感じだ。

我々夫婦は道道106号、オロロンラインを北上している。右側の道沿いには、電柱が等間隔に並び、その向こうにはサロベツ原野が広大な広がりを見せていて、それ以外は何もない。道の左側は荒れた海。頭上の空は、厚い雲に覆われている。

はるか前方、何かが屹立している姿が目に入る。湿った空気に霞んで、はっきりとは見えない。相当な大きさの、何かが複数あることだけは分かる。我々夫婦は、おそらくオントルイの風車だろうと思いながら進むが、走っても走っても、我々夫婦とそれの距離は縮まらない。

やがて、先端に巨大な風車を頂いた、巨大な白い柱の形が識別できるようになる。風車郡は、どうやら道沿いのはるか向こうまで続いている。もやに霞んだ巨大な風車が、ゆっくり回っている姿が目に入る。

風車郡との距離は加速度的に縮まり、今や我々夫婦はその巨大さに圧倒されている。
とうとうオトンルイ風力発電所に到達し、我々夫婦は道端にバイクを停める。そして眺める。風力発電を管理しているような建造物は見当たらない。道沿いにずらっとならんだ風車郡が、ただ屹立している。原始の大草原をバックに、ただ屹立し、海風を受けた風車がゆっくりと回転している。

風車郡は見渡す限り道沿いに並び、はるか北の方でもやに霞んで消えている。我々夫婦は感銘を受ける。ツーリング中の一場面として捉えるには、余りにも現実ばなれした光景だ。

オロロン再開
オトンルイ風力発電所を超えると、内陸側の電柱がなくなり、暫く進むとガードレールもなくなった。
ああ、アルフレッド、一体ここはどこだ。(ひさびさのアルフレッド登場だな!)
本当に日本か?

右側にはサロベツ原野、左側には荒れた日本海。その中をつらぬいてどこまでも伸びる、一本の美しい道(回りの風景が美しいというのではなく、それ自体が美しい道というものがあるのだ)。0円マップのアンケートで、人気No.1の道なのも納得だ。生まれてこのかた、俺が見た景色の中で最も壮大な景色だ。それは間違いない。
いつか晴天の日に走ってみたいものだ。

天気が良くないので利尻富士は諦めていたのだが、低い雲の下の方に少しだけ見ることが出来た。これはこれで神秘的な感じだ。

オロロンラインを走りきった。稚内市街手前で雨が降り始め、市街地に入ると大雨となった。予定していた野寒布岬はやめにして、宗谷岬に向かうことにした。既に寒さ対策でレインスーツを着込んでいるので、我々夫婦はそのまま突き進んだ。

午後2時10分。神居岩温泉から210km走って宗谷岬に到着した。
ここでライダー達が得るものは、日本最北端の岬に到達したという達成感だ。我々夫婦もそれを得た。

最北端の碑では中国人観光客の団体が、異様に時間をかけて記念撮影を行っていた。中国人にとって、日本最北端の地が一体どんな意味を持つというのか。謎だ。
我々夫婦は、中国人観光客の撮影が終わるのを待って、記念撮影を行った。

宗谷岬を後にして、最北端のGSで給油。証明書と貝殻のキーホルダーをもらった。旅のいい記念になるはずだ。

雨なのでエサヌカ線はあきらめた。あとは本日の宿泊地に向かうだけだ。我々夫婦は宗谷国道(国道238号)のオホーツク海側を南下した。人生初のオホーツク海だ。

寒さと長時間走行で、かみさんの疲労が限界に達しつつある。我々夫婦は道の駅「さるふつ公園」に入って休憩をとった。俺が「予約した宿はキャンセルして、この辺で宿探すか?」ときいてみると、かみさんは「もう少しがんばって見る」と言った。俺はフリースとウィンドストップインナーをかみさんに着させた。温かい缶コーヒーを飲み、カロリーメイトを食べて出発した。

国道238号と国道275号の交差点付近でセイコーマートに入り、本日の夕食を購入。(またコンビニかよ)
時間をかけて買い物をして、かみさんの体力が少し回復した。
かみさんは寒さの為に体に力が入り、両足の筋肉がこわばっていると言う。
俺は、意識的に姿勢を変えながら運転するようにアドバイスした。かみさんはその通りにし、その後少しはましになったようだ。

本日の宿泊地まであとひとふんばりだ。
我々夫婦は、国道275号を内陸に向かって進み、道道120号を左折した。

午後6時30分。ようやく本日の宿泊地、「うたのぼりグリーンパークホテル」に到着だ。
後半は大雨の中のつらい走行となり、かみさんは疲労がピークに達したわけだが良くがんばった。

我々夫婦はバイクから荷物を降ろし、ホテルの水道とホースを借りてジャブジャブ洗った。防水バッグだから出来る技だ。フロントの人に確認して、バイクを軒下に停めさせてもらい、バッグとレインスーツを雑巾で良く拭ってチェックインした。

部屋に入って、とりあえず一服。
猛烈にほっとする瞬間だ。

「うたのぼりグリーンパークホテル」は、建物も部屋もきれいで、設備が整った宿泊施設だ。料金は素泊りで1人4,095円(楽天トラベル)。お風呂は温泉だし、これは相当お値打ちなのではないか。

我々夫婦は、レインウエアの泥を水で流してバスルームに干し、衣類を宿のコインランドリーで洗濯した。疲れていてもやるべきことはやるのだ。そして大浴場で疲れを癒した。
俺はビール、かみさんはジュースを飲みながら、セイコーマートで買った夕食を食べ、ふかふかのベッドで熟睡したのだった。

本日の走行距離は330km。
ローカルニュースの天気予報によると、明日は天気が良くなるようだ。

■■ 3日目 歌登〜美瑛〜富良野 ■■

5時起床。
「朝風呂行くか?」とかみさんに声をかると、かみさんは目を開けずに「行って来ていいよ。もう少し寝る」と言った。俺は一人で大浴場に行くことにした。ふと見ると、まだB+COMの充電ランプが点等していた。とっくに充電完了しているはずなのにおかしい。

俺はB+COMの電源ボタンを押してみた。しかし、電源はは入らない。俺はその場に座り込み、朝風呂に行くのも忘れて、あーでもないこーでもないとB+COMを弄り回した。そうこうしている間に30分程経過し、かみさんが目を覚ました。
B+COMが壊れたことを伝えると、かみさんはショックを受けたようだ。B+COMを購入して以来、ツーリングの時はもちろん、近所を二人で走るときも使用しているので、走行中に会話できないのが不安なのだ。

しかし、壊れてしまったものは仕方ない。我々夫婦は走行中の通話を諦め、<だいじょうぶか?>、<だいじょうぶ>、<スピード上げろ>、<スピード落とせ>、<停まれ>等のサインを決めた。

セイコーマートのパンを食べ、身支度を整えてチェックアウトした。

荷物をバイク2台に括り付け、かみさんの出発の儀式も完了した。北海道ツーリング3日目のスタートだ。

出発時は小雨が舞っていたものの、我々夫婦は雨具を着けずに出発した。今日は必ずいい天気になるはずだ。なぜなら、美瑛や富良野の美しい景色の中を走る予定だからだ。(どんな自信だよ)

道道120号から道道12号を左折して山道を走り、国道275号(頓別国道)を南下。
道の駅「おといねっぷ」で小休憩をとり、国道40号を走った。国道40号の美深のあたりはすごくいい景色だった。

無料の名寄バイパスで距離を稼ぎ、宗谷本線風連駅近くのガソリンスタンドで給油を行った。
位置の問題か、時間の問題か、南下するにつれ雲が減り、旭川の手前では快晴となった。我々夫婦のテンションは急上昇した。
北海道3日目にして、やっと青空の下を走れるのだ。かくて美しい一日が始まった。

旭川の手前で道道37号を左折した。旭川市街を避けてショートカットする為だ。道道37号から道道68号を進み、交差する国道237号を超えて国道452号に入った。いよいよ美瑛だ。

我々夫婦は美しい景色の中を走った。超絶的な気持ち良さ。2日間、悪天の中を走ったので、その感覚も一際だ。美瑛は、過去2回車で観光に来たことがあるのだが、こんな気持ち良さを味わえるのは、やはりバイクならではだ。

我々夫婦は、昼食をとる予定のレストラン「ランドカフェ」を探しつつ走り回り、マイルドセブンの丘の駐車場にCB400SSとビラーゴを入れた。

美しい草原が、なだらかな起伏をおりなしてどこまでも続き、彼方では山塊の稜線が晴天の空をバックに明確なコントラストを浮かび上がらせている。

美瑛の風景は、これぞ北海道!って感じだ。

壮大で美しい景色を堪能して、マイルドセブンの丘を後にした。

時刻は12時を回っている。真剣にレストランを探そう。

時刻は12時30分。
若干迷子になったが、やっと見つかった。本日の昼食予定地「ランドカフェ」だ。

駐車場には車がたくさん停まっていた。あいている場所を見つけて、CB400SSとビラーゴを停めた。店に入って行くと店内は満員だった。店の人が「これに名前と人数を書いて、表でお待ち下さい」と言った。俺は順番待ちの用紙に名前と人数を記入して、店の外で待った。10分程で声がかかり、我々夫婦は店に入って案内されたテーブルについた。

ランドカフェはおしゃれな感じの喫茶店だ。ランチには併設の無農薬農場でとれた馬鈴薯などをメイン食材に、ドイツの家庭料理を出している。

俺は季節のランチ(850円)、かみさんはソーセージのランチ(1,000円)を注文した。そとで食事をすると、いつもかみさんが注文する料理の方が高いのだ。(だからどうでもいいって)

俺は馬鈴薯のシチュウ?(うん、シチュウだ。多分)と、ライ麦パンを交互に食べた。薄味でヘルシーな感じで、上品な味付けでうまい。女の人が好みそうな味だ。

食事を終え、ランドカフェを後にした。
我々夫婦はパッチワークの路を抜けて、国道237号にでることにした。

途中道端にバイクを停めて記念撮影。
丘がパッチワークに見えないけど、まあいいのだ。いい天気で、いい景色なんだから。
我々夫婦は満足して美瑛を後にした。国道237号を富良野方面に走り、道道70号を越えて右折。ジェットコースターの路に入った。

ジェットコースターの路は一直線の道が、いくつもの起伏を登ったり下ったりする、不思議な路だ。バイク雑誌で、よく紹介されているので来て見たのだ。

ジェットコースターの路から国道237号に戻り、フラノーブルで牛乳を飲み、ソフトクリームを食べた。ここの牛乳は砂糖が入ってるんじゃないの?って思うくらい甘いし、ソフトクリームはミルクの味が濃厚ですごーく美味しいのだ。かみさんは、茹でたとうもろこしを買いたかったようだが、売ってなくて残念そうだった。

過去2回美瑛や富良野を訪れたときは、ここでジンギスカンを食べたのだが、今回は時間が合わなかったので食べなかった。そういえば今回は、まだジンギスカンを食べてない。これはまずいことになって来た。(別にまずくないだろ)

再び国道237号富良野方面に進み、国道38号手前のセルフスタンドでCB400SSとビラーゴのタンクを満タンにしておいた。
国道38号を右折して新空知橋を渡り、富良野スキー場に向かう路を左折。少し走って、朝日ヶ丘公園方面に左折した。

午後4時30分。本日の宿泊地、「リゾートイン ノースカントリー」に到着した。

今日は一日好天だったので、荷降ろしが楽だ。我々夫婦はてきぱきとゴムロープを解き、バッグとヘルメットをぶら下げてチェックインしたのだった。

部屋に上がって少し休憩し、フロントにキーを預けて外出した。まだ時間が早いので、宿の近所の喫茶店「北時計」に行くのだ。

CB400SSにタンデムで出発し、5分も走らずに「北時計」に到着した。

俺とかみさんはそれぞれ、ブレンドコーヒーとアイスコーヒーを注文した。

北時計は、「北の国から '95秘密」でロケに使われた喫茶店だ。
しゅうが純に自分の過去を告白するという、名場面が撮影された、あの喫茶店だ。
窓際のテーブルでしゅうが純に手紙を書いていると、純が店に入って来て、しゅうが「手紙書いてたの、読んであげる」って言って、自分が書いた手紙を読み上げて過去を告白して、途中で純が手紙を奪って破って「・・・・・今度の日曜・・・山部山麓デパート行かねーか?・・・CDデッキの・・・出物があるんだ」って言って、驚くしゅうの顔に笑顔が広がって、しゅうの瞳から涙がこぼれ落ちて、しゅうがこくりと頷いて「・・・行く・・・」って言って、そんでもって純が、・・・純が・・・・うぅっ・・・(泣くなよ!)

俺は店の人に「お店の写真撮っていいですか?」と確認し、店内の写真を数枚撮った。北時計は、北の国からフリーク(俺もかみさんもそうだ)には外せない喫茶店なのだ!

宿に帰って風呂に入り(ここの大浴場はしょぼかった)、一時間位昼寝して夕食だ。我々夫婦は宿のレストランに向かった。

宿の夕食はチーズフォンデュがメインのビュッフェだ。別料金で俺のビールとかみさんのコーラをを注文し、料理をとりに行った。チーズフォンデュ用のパン、ブロッコリー、にんじん、ジャガイモ、肉料理等をゲット。かみさんはピシソワーズもゲットした。ここの野菜は激うまだ。チーズフォンデュのチーズも美味しかった。

「リゾートイン ノースカントリー」は朝食付きで一人8,000円(じゃらんnet)。夕食は別料金で、確か4,000円だったような。まあ、料理がおいしいので納得だ。

ああ、今日は良く遊んだ。
本日の走行距離は274km。
明日は雨の中を移動して定山渓に早めに到着し、温泉に入ってのんびりするつもりだ。

■■ 4日目 富良野〜日高峠〜定山渓 ■■

やっぱり5時起床。かみさんは6時頃起きた。
朝食は、今日も1階のレストランでビュッフェだ。我々夫婦は極上のサラダと極上の牛乳、そして自家製のパンを楽しんだ。「リゾートイン ノースカントリー」は大浴場はしょぼいが、料理はうまかった。

食事を終えてチェックアウトし、出発準備。この日かみさんは今回のツーリング中、最も激しい出発の儀式を繰り広げた。バイクに荷物を括り付ける俺の、すぐ横で踊ってるので邪魔でしょうがない。ともあれ出発準備が整い、我々夫婦は出発した。

国道237号を南下し、国道38号の分岐を左にやり過ごして山道に入ると、細かい雨がポツリ・・・ポツリ・・・と落ちてきた。俺は素早い判断を下し、パーキングエリアに入った。そこで我々夫婦はレインスーツを着用し、レザーグローブを雨用のグローブと取り替えたのだった。

俺の判断は正解だった。それと言うのも、パーキングエリアを出発してすぐに本降りになったからだ。

雨の金山峠を慎重に超え、湯の沢温泉を通過して、道の駅「しむかっぷ」に入った。去年の北海道ツーリングの最終日に、トマムから新千歳空港に向かう途中でこの道の駅で休憩したことを、駐車場に入ってから思い出した。

軒下で休憩しているライダーがいたので、「今日はどちらからですか?」ときいてみた。
「静内温泉からです」とライダーは答えた。
キャンプ道具を積んでいる所をみると、静内キャンプ場に宿泊していたのだろう。去年我々夫婦が、初日に宿泊したキャンプ場だ。静内温泉からここまでだと、道道71号から国道237号に出て北上してきたはずだ。
「下の方の天気はどうでした?」俺はきいてみた。
「降ってなかったんですよ。だから朝早く出発して上がって来たんですけど、日高峠くらいからどしゃぶりになっちゃって・・・予定がくるっちゃいましたよ。」
「南の方に向かえば、降ってないかもしれないですかね?」
「いやー、出発したときは降ってなかったけど、今はもう降ってるんじゃないですかねー」
「そうですよね。ありがとうございました。」
俺はお礼を言い、「お気をつけて」と声を掛けてその場を離れた。
我々夫婦はトイレを済ませて休憩し、今や大雨の中出発したのだった。

日高峠を超え、国道274号を右折して石勝樹海ロードを走る。日高峠を越えてから、雨は大分小降りになった。名石パーキングで休憩しているとき、道路を走り去るライダーがクラクションを鳴らし、我々夫婦に手を振って挨拶してくれた。我々夫婦も手を振り返した。
休憩を終えて出発。パーキングエリアの出口に鹿がいた。俺はデジカメを動画モードにしてゆっくりと近づいていった。鹿は我々夫婦に気がつき、道路わきの森に走り去った。あとから動画を確認してみると、レンズに付いた水滴で鹿はほとんど見えなかった。残念。

石勝樹海ロードで夕張を超え、札幌方面に進む。雨は降ったり止んだりとなっている。

国道234号の交差点を超え、道の駅「マオイの丘公園」に入った。お昼を過ぎているので、ここで昼食にするのだ。バイク駐輪場にCB400SSとビラーゴを停め、レインジャケットを脱いで荷物のネットに突っ込んだ。我々夫婦はレインパンツを雑巾で良く拭き、ヘルメットを持ってレストランに入った。

食事を終え、ソフトクリームを食べ、道の駅の市場で茹でたとうもろこし(ピュアホワイト)を購入。再びレインジャケットを着用して出発した。

国道274号から道道341号に入って山道を超え、国道453号を経由して国道230号に入った。
もはや雨は完全に上がっている。我々夫婦は、セイコーマートの駐車場でレインスーツを脱いだ。あーせいせいした。そして定山渓温泉に向かったのだ。

午後3時45分。本日の宿泊地「定山渓温泉万世閣 ホテルミリオーネ」に到着だ。
ホテルの車寄せにバイクを乗り入れると、係りの人がバイクを停める場所に案内してくれた。我々夫婦は、指定された場所にCB400SSとビラーゴを停め、荷物のゴムロープを解いた。
さ、温泉入ってまったりしよう。

我々夫婦はチェックインのため、ロビーに入って行った。
ミリオーネは、昔ながらの巨大温泉旅館だ。ブーツにジーンズ、革ジャン姿でヘルメットを持ってロビーを歩いていると、なんとなく違和感を感じる。少なくとも、レインスーツを脱いでおいたのは正解だった。

ミリオーネはスカイツーリングで、いくつか選べる宿のうちの一つなのだ。

部屋に上がって荷物を降ろし、ジーパンと革ジャンを半そでと短パン(かみさんは浴衣)に着替えて早速温泉だ。我々夫婦はエレベーターで大浴場のあるフロアに向かった。

ミリオーネの大浴場は巨大だ。結構な人数が入浴しているが、浴室や浴槽が巨大なので、全く混んでる感じがしない。
俺はまず体と頭を洗い、いろいろな種類の浴槽に順番に浸かった。定山渓温泉は2回目だが、相変わらずやわらかくていい湯だ。

あー、いい湯だった。
休憩所でかみさんと待ち合わせて部屋に帰り、道の駅「マオイの丘公園」で買ったピュアホワイトをつまみに、サッポロクラシックを飲んだ。そして畳の上でごろごろした。ああ、なんという幸せ、なんという心地よさ!

そして夕食。
3連休の初日だけあって、食堂は混んでいた。順番待ちをして席に着き、ビュッフェの料理をとりに行った。ミリオーネの食堂はやはり巨大で、半端じゃない数の料理が用意されている。我々夫婦は目移りしながら料理を選んだ。

今回の北海道ではジンギスカンを食べていなかったので、なんとなく焦燥感を感じていたのだが、並べられた料理の中にジンギスカンがあったので、自分の皿に盛った。今回はまあ、これでよしとしよう。
北海道でジンギスカンを食べないと、どうも納得がいかない感じなのだ。

さて、くうぞー!
俺は、大量の料理をビールで胃に流し込んだ。かみさんは何回も料理をとりに行き、俺の1.5倍の料理を完食したのだった。

部屋に帰ると気持ち良さそーーーな布団がひかれていた。布団係りの人に感謝。
食後にもう一度風呂に入ろうと思っていたのだが、俺は気持ち良さそうな布団と、真っ白なシーツに引き寄せられた。おやすみなさい。

本日の走行距離は214km。
とうとう明日は最終日。もっともっと走っていたい感じだ。

■■ 最終日 定山渓〜新千歳空港〜羽田 ■■

あくまでも5時起床。
今日はゆっくり出発するつもりだが、目が覚めちゃうんだから仕方がない。

窓の外を見ると、朝から本降りの雨が降り続いている。結局最終日も雨だ。今回のツーリングは、とうとう毎日雨に降られたことになる。

かみさんはまだ寝てるので、一人で朝風呂に向かった。
服を脱いで脱衣籠に放り込み、ガラガラに空いている浴室に入って行った。そして露天風呂を独り占めだ。
低い雲がからまる山々。雨を眺めながらの朝風呂も、またおつなものだ。

朝食もまたビュッフェ。朝から物凄い種類の料理がならんでいる。どうもビュッフェだと食べ過ぎていかん。この4日間で、絶対体重がふえているはずだ。

我々夫婦は朝食を終え、暫くのんびりしてから「定山渓万世閣 ホテルミリオーネ」をチェックアウトしたのであった。

ウエストバッグをレインジャケットの中に入れているので、まるで妊婦さんのようだ。

それはともかく、出発の準備が整った。
とうとう北海道ツーリング最終日のスタートだ。生憎の雨だが、安全運転で行きましょう!

本来、最終日は支笏湖を回って千歳に向かうつもりでいたのだが、本降りの雨なのでやめにした。我々夫婦は早めに新千歳空港に到着し、空港のおみやげ屋さんで時間を潰すことにした。

昨日来た道を戻り、国道36号を右折して千歳方面に進む。今日は予報通り大雨だ。

我々夫婦の北海道ツーリング2009も残りわずかだ。雨には苦労させられたが、それでも楽しかった。北海道ツーリングは最高だ。たとえ大雨にふられてもだ。来年もまた来るぞー!って感じだ。

国道36号から左に分岐して道道130号に入り、新千歳空港に到着した。ANA指定のスタンドでガソリンを抜き、ANAの貨物に移動。レインスーツを脱いで荷物のネットに括り付け、俺の革ジャンとかみさんのライディングジャケットは防水バッグに押し込んだ。バッテリープラグを外してCB400SSとビラーゴを預け、我々夫婦はタクシーで空港ターミナルに移動した。

空港内のラーメン道場で「あじさい」のラーメン(今いちだった)を食べ、おみやげやさんでゆっくり買い物をして搭乗口に向かった。

かくして我々夫婦とCB400SSとビラーゴは、北海道の大地を飛び立った。かみさんは例によって、速攻で寝息を立てはじめた。俺はと言えば、既に北海道が恋しくなっていたのであった。


北海道の道には、
陸と海とが鬩ぎ合う、荒々しい光景があった。巨大な風車群が屹立する、SFのような景色があった。どこまでも広がる、原始の草原があった。雨に煙る、最北端の岬があった。眩い陽光降り注ぐ、美しい丘があった。大雨の中、にこやかに手を振る、こわもてのチョッパー乗りがいた。一週間雨に降られ通しだという、関西から来たBMW乗りがいた。そのライダーは「やれやれですわ」と言って、あははははと笑った。

我々夫婦の北海道ツーリングは、出発前日の仕事が終わった瞬間に始まり、帰宅後暫くの間終了させることが出来ない。我々夫婦の魂は、いまだにサロベツ原野で海風に吹かれ、美瑛の丘で陽光を浴び、日高峠で雨に打たれている。
この放心状態から立ち直るために、3ヶ月は要するはずだ。去年もそうだったし、来年もそうなのだろう。恐らくは。



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