2008年5月3日(土)、5月4日(日)
月山、庄内平野、日本海、そして飛の崩れ

目的地 日本海、飛の崩れ
ルート
1日目 :  環七 → 国道4号 → 国道13号 → 国道287号 → 国道458号 → 国道112号 → 国道7号 →
「飛の崩れ」(524km)
2日目 :  国道7号 → 国道290号 → 国道113号 → 県道250号 → 県道8号 → 国道287号 → 国道13号 →
国道4号 → 環七 (552km)
走行距離 1,076km

2008年5月1日と5月2日の二日間ほど、天気予報を頻繁にチェックしたことは過去にはなかったし、これからもないだろう。おそらくは。
先週は雨の予報の中、長野入りし、予報通り降られたわけだが、それでも楽しいキャンプツーリングとなった。今週は五月晴れ、俺に関して言えば絶好のツーリング日和の中、塩原から会津を抜けて、東北の日本海沿いを走るはずだったのだ。それが、どうしたことだ。気圧配置のばか。5月1日から天気予報が怪しくなり、5月2日には関東甲信越から東北の太平洋側が雨の予報となった。ウェザーニュースのサイトによれば、5月3日の東京は100%雨の予報だ。

しかしだ。東北の日本海側は朝から晴れらしい。俺は雨の中を出発することにした。福島位まで雨の中を走れば、山形県、秋田県は快適に走ることができるはずだ。最上川沿いの国道を北上し、月山を超え、庄内平野を突っ切る。そして、日本海沿いに秋田県に入ってキャンプ場に到着する。そこで俺は、我が足立区の住まいから500kmの彼の地で、日本海に沈み行く夕日を眺める。そのとき俺は声に出して言うはずだ。おお!飛の崩れ!と。


セットしておいた携帯のアラームが午前2時に鳴り、俺はすみやかに目を覚ました。窓を開けて確認するまでもなく、音で分かった。しっかりとした雨音だ。俺は家の中でレインスーツを着け、玄関でブーツを履いてゴアテックスのブーツカバーを装着した。雨の中で積載を完了して再び玄関に戻り、ヘルメットとグローブと、ゴアテックスのグラブカバーを持った。かみさんが、とびらの向こうの寝室から、寝ぼけた声で「ひをふけてね」と言った。それを言うなら、気を付けてねだ。

午前3時15分。俺は外に出て玄関に鍵をかけ、雨の中を、500km彼方の目的地に向けて出発したのだった。

環七から国道4号を左折し、バイパスを北上した。出発から1時間程走り、国道4号を使うときはかならず寄る道の駅「ごか」を通過するころ、夜が明けてきた。雨が降っていようが、晴れていようが、世の中が明るくなるのは良いことだ。

俺は雨の中を走った。とてつもなくガンガン北上した。(なんだそりゃ)
出発から1時間40分で81km走り、小山のコンビニに入って一回目のトイレ休憩。店の前の軒下で菓子パンを食べ、缶コーヒーを飲みながら一服した。

雨は小降りになったり、本降りになったりするものの、止む気配は全くない。なんせ関東地方の午前中は、ウェザーニュースによれば、降水確率100%なのだ。おれはコンビニを出発し、とてつもない北上を再会した。(意味わかんね)
宇都宮、矢板、塩原、那須を越えて福島県に入り、白河のスタンドで一回目の給油を行った。この時点で時間は7時ジャスト位。スタンドのおじさんに「東京から?高速混んでた?」と聞かれたので、「いや、下で来たんで・・・」と答えた。
おじさんは驚き、「ええ?!随分早く出たんだねー」と言った。
俺は何と答えていいか分からず、とりあえず「えへへへへへ」と答えたのだった。(またかよ)

福島県に入ったあたりから、雨が降ったり止んだりするようになって来た。郡山のあたりでは完全に止み、道路も乾いていた。俺は暫く走り、二本松のあたりでCB400SSを道端に停めた。レインスーツを脱ぎ、ブーツカバーをはずして一服した。この先、天気は段々良い方向に向かうはずだ。タバコを携帯灰皿でもみ消し、マップホルダーのツーリングマップルのページを変えて出発。走り出して5分もたたない内に雨が降って来た。俺はメットの中で「ちくしょー、ちくしょー、ちくしょ〜〜」と呪いの言葉を発した。そして道端にCB400SSを停め、レインスーツを着てブーツカバーを装着したのだった。

福島市街に差し掛かり、若干道が混雑して来た。この辺りで、また雨が上がった。しかし俺は、雨具を装着したまま走った。福島駅の辺りで国道4号から国道13号に入り、駅周辺の混雑を我慢して進んだ。東北自動車道の福島飯坂インターを超えて暫く走り、東栗子トンネルを通過した。

午前9時20分。出発から293km走って、福島県と山形県の県境に到着だ。
バイクで初の山形入りなわけだが、思っていたよりも近かった感じだ。

段々良い天気になって来た。米沢駅の付近では、赤備えの鎧武者が集団で歩いていた。何かイベントがあるようだ。沿道は、これから行われるであろう、イベントの見物客と思われる人々でにぎやかだ。当然道路は混雑していた。俺は沿道の人や、民家、商店を眺めながらゆっくりと進んだ。信号待ちで、沿道のおじいさんに「どこさ行くんだ?」と聞かれた。多分そう言われた。俺はメットのシールドを上げ、「秋田のにかほまで」と答えた。おじいさんは「○×♪#でαBに△××〜」と言った。何を言ってるのかさっぱり分からない。信号が青になり、俺は「はい。どーも。」と言って発進した。

市街地を通過し、羽前小松駅の近辺で迷子になったが、コンビニで道を確認して事なきを得た。長井市のスタンドで2度目の給油。スタンドの人に「秋田のにかほまで、どのくらいあります?」と聞いてみたら、「いや〜、まだまだありますよ〜」と言われた。スタンドを後にして最上川の母なる流れに沿って北上。最早快晴。俺はレインスーツとブーツカバーを脱ぎ、最上川の写真を撮ることにした・・・・・・あれ?デジカメ・・・・どこ行った?俺はウエストバッグの中を引っ掻き回した。ジャケットのポケットやズボンのポケット、考え得るあらゆる場所を捜索した。しかし、ない。

最後にデジカメを使用したのは、福島県と山形県の県境に到達したときなのは憶えている。そのときは確かにウエストバッグにしまった。どこで落としたのか、全く心あたりがない。俺は、仕方なく出発した。ものすごいショックだ。デジカメ自体ももったいないが、今日今までに撮影した写真がなくなるのがつらい。それではなぜ、県境までの写真があるのか、という疑問は、こののち明らかになるのである。

最上川沿いの国道287号を悲しみを抱えて北上した。さて、どうすべきか。せっかく初山形、初秋田、初日本海、アンド一年間憧れた飛の崩れだ。写真が撮れないのはあまりにも寂しい。俺は、寒河江市の辺りで富士フィルムの写真やさんを見つけ、CB400SSを店の前に停めた。

ニコンのデジカメ、SDメモリ、リチウム電池を購入。しめて34,000円。予定外の、本来不必要な出費だ。痛い。悔しいから、店の前で1枚記念写真を撮ってやった。(どんな意味があるんだよ)

国道287号から国道458号を左折して数キロ走り、国道112号を左折。寒河江ダムを超えて月山湖の駐車場で一服。この辺は山道とはいえ、カーブも勾配もゆるやかで、美しい景色を眺めながら、リラックスして走ることが出来る。山形県に入ってから、ツーリングのバイクを頻繁に見るようになった。この辺りではソロのライダー、マスツーリングのグループが沢山走っている。みな青空の下、出羽三山中腹の道を快走している。

月山湖を後にして、月山花笠ラインから月山道路を走る。5月とは言え東北の山道だ。さぞかし寒いのだろうと想像していたが、暑くもなく寒くもなく、超快適だ。

出羽三山を走り抜け、鶴岡市で国道7号に入ってさらに北上。庄内平野を快適に走った。

新両羽橋を渡って酒田市街を過ぎると、国道7号は海沿いの道になり、ここに至ってようやく日本海を見ることができた。日本海といえば演歌。心の中に聞こえて来るのは、森昌子の哀しみ本線日本海だ。
何処へ帰るの、海鳥たちよ
シベリアおろしの、北の海
って感じだ。
さてと・・・・北へ、北へ向かうか・・・(なにしんみりしてんだよ)

15時45分。ようやっと秋田県にかほ市に入った。
本日の行程もいよいよ大詰めだ。

秋田県にかほ市に入って、コンビニに寄り、今日の夕食とアルコールをゲット。今日はさすがに疲れたので、お惣菜とインスタントラーメンで済ませることにした。コンビニの隣りのスタンドで、本日3度目の給油を終えて少し走り、にかほ市温泉保養センター「はまなす」に到着した。もはや夕方と言っていい時間だ。俺は少し焦ってきた。キャンプサイトで日本海に沈む夕日を見るのが、今回の旅の、最大の目的だからだ。

俺は入り口の券売機で、300円の入場券を買って受付に渡して入場した。洗い場で体と頭を洗って温泉に浸かり、長時間走行の疲れを癒した。のんびりしていられないが、限られた時間の中で、出来得る限りそうした。そして、ある程度目的を果たしたのである。

はまなすには、普通の浴槽、気泡湯、露天風呂、打たせ湯、サウナがある。これで300円だ。泉質は、塩化物強塩泉。切り傷、やけど、慢性皮膚炎などに効果があるらしい。

17時5分。出発から524km走って、本日の宿営地、一年間憧れ続けた飛の崩れの駐車場に到着だ。

積載用のゴムロープを外して、荷物を全て降ろし、サイトへ向かう斜面を運び上げた。 すでに日は大きく傾いている。さっさと設営して、日没を眺めよう。

設営完了。
日没には若干余裕を持って、設営することができた。俺はコンビニで買った缶コーヒーを飲みながら一服した。そして辺りを見回した。

話には聞いていたが、本当に素晴らしいロケーションのキャンプ場だ。ゴールデンウィークだというのに先客はファミリーが二組、俺の設営中に到着した、夫婦と思われる二人連れと、俺を合わせて4組だけだ。ほんとに、こんな素晴らしいキャンプ場を、無料で利用していいのか?って感じだ。

さて、頃合の時刻が迫ってきた。俺は、デジカメを持って斜面を降りて行き、柵に腰掛けてビールを飲みながら待った。海岸では、大きな岩の上にカップルが並んですわり、肩を寄せ合って夕日を見守っている。カップルの男性が、竹箒を片手に持っているのが謎だ。

太陽は徐々に水平線に近づいて行き、燃えるような色に変化しつつ、上方の空ににオレンジ色の輝きを放射していた。俺は、ビールを柵の支柱の上に置き、タバコを一本取り出して火をつけた。太陽は一度雲に隠れて、また姿を現した。今や太陽の位置は水平線ぎりぎり、静かな波音と海鳥の声をBGMに、壮大なフィナーレを迎えようとしている。ついに太陽は水面に接し、ゆっくりと、水平線の向こう側に沈んで行って、やがて完全にその姿を隠した。後には、水平線の上にオレンジ色の広がりだけが残った。

今回のツーリングでは、これを見るために13時間掛けて、500kmの道のりを走破したのだ。その甲斐があった。俺はビールを飲み干し、満足して柵から地面に降り立った。

俺は、テントの傍らに戻ってキャンドルランタンに火を灯した。カップの日本酒を開け、ストーブで熱したさんまの蒲焼缶と、お惣菜のパックをつまみに宴会を開始した。日本海には、日本酒が良く似合う。(そうか?)

昼間強かった風は完全に収まっていて、全く寒さを感じない。俺の他の3組のキャンパーとは程よい距離があり、のんびりと寛ぐことが出来た。足の上を小さなげじげじのような虫が這っているのを発見して、「うわーーーーっ!!」と、かなり大きな叫び声を上げたことを除けば、静かでおだやかな時間を過ごした。

日本酒を飲み干して、つまみを食べ終え、札幌一番塩ラーメンを作って平らげた。俺は、歯をみがいて20時30分頃テントに入った。ウィスキーを飲みながら30分程読書し、気を失うように眠りに落ちたのだった。

4時起床。ぐーっすり寝た。テントの中を片付けて4時30分頃表に出た。既にあたりは明るくなっている。歯を磨いて顔を洗い、深呼吸。すがすがしい潮の香りを嗅いだ。海に向かって、なんとなくラジオ体操第一を開始したが、途中で分からなくなったのでやめた。

ロールパンの朝食をとり、コーヒーを飲みながらツーリングマップルで今日の行程を検討した。

前室のドカシーにあぐらをかいて荷物を整理し、テントを収納袋に押し込んだ。荷造りを終えた荷物を全て駐車場に運び、ゴムロープで後部シートと荷台に、しっかりと括り付けた。

撤収完了。エンジンの暖気を行いながら一服し、ヘルメットとグローブを着けた。さあ、また500kmだ。俺はシートに跨ってサイドスタンドを蹴り上げ、気合を入れて出発したのだった。

飛の崩れを後にして、国道7号を南下する。日本海に沿って暫く走り、酒田市街で内陸に入る。俺は、朝の庄内平野を突っ切った。行く手に出羽三山を臨み、ガラガラに空いている真っ直ぐな道を走った。なんじゃこりゃーーーって感じの開放感だ。ものすごーく爽快だ。

鶴岡市の辺りで国道112号に入って、往路と同じルートを採ろうと思っていたのだが、もう少し海沿いの道を走りたくなってきた。俺はこのまま国道7号を走り、再び日本海側を南下して新潟県に入ることにした。

山形自動車道の鶴岡インターを超えて暫く走り、由良海岸で再び日本海に出た。潮の香りを嗅ぎ、陽光を浴びながら走った。こちら側の車線にも、反対車線にもバイクが沢山走っていた。

鶴岡市から新潟県山北町に入ると、国道7号は国道345号と離れて内陸部に入って行く。国道345号と分岐する交差点の先頭で信号待ちをしていると、右折車線にツーリングのグループが並んだ。先頭のライダーが俺に向かって、「一人旅ですかー?」と言った。
俺はメットのシールドを上げた。「そうですーっ」
ライダーは「気をつけてー」と言い、俺は「どうもー」と答えた。
信号が青になり、俺は発進した。右折待ちをしているツーリングのグループに左手を振って挨拶し、新潟県の内陸部に向かったのだった。

上林村のスタンドで本日一度目の給油をして、国道290号を左折。少し走って国道113号に出て、新潟県から再び山形県に入った。

絵に描いたような渓谷沿いの道を走り、小国の辺りでドライブインに入った。山菜そば(500円)を食べた。山菜と一緒に、なぜか魚肉ソーセージが入っていた。

昼食を終えて、完璧な青空の下、缶コーヒーを飲みながらのんびりと一服した。

国道113号から県道280号、県道8号を走り次ぎ、国道287号に出て、米沢駅方面に南下。米沢市街で国道13号を左折し、福島方面に走った。何気なく、往路にこの辺で休憩したなー、とか思いながら走ってたら、右側の空き地になにやら光るもの発見。俺は右のウィンカーを出し、反対車線の車が途切れるのを待って、空き地にCB400SSを乗り入れた。

俺は光る物の脇にCB400SSを停めた。誰にも拾われず、車に踏み潰されることもなく、デジカメはその場所に落ちていた。とりあえず記念撮影だ。俺は昨日買ったデジカメで、昨日紛失したデジカメの写真を撮った。そしてデジカメを拾い上げ、壊れてないことを確認してウェストバッグに突っ込み、しっかりとジッパーを閉じた。かくして俺のデジカメと、昨日撮影した何枚かの写真は、一昼夜ぶりに俺の元に戻って来たのだった。

福島駅の辺りで国道13号から国道4号を右折。本宮インター近くのGSで本日2度目の給油を行った。郡山、白河を越えて栃木県に入った。道は以外にも空いていて、俺はガンガン走った。とてつもなく南下した。(まただよ)

那須町、那須塩原市を走り抜け、矢板市まで一気に走ってコンビニでトイレ休憩。缶コーヒーを飲みながら一服した。宇都宮から、小山までバイパスで一気に距離を稼ぎ、埼玉県春日部市のスタンドで本日3度目の給油。草加の辺りで若干混雑したが、その他は順調に走り、埼玉県から東京都足立区に入った。

19時10分。キャンプ場を出てから552km、昨日の朝出発してから1,076km走って、無事に帰宅したのであった。


おお!飛の崩れ!
噂に違わぬ、最高のロケーション!日本海に臨む、小高い丘の上の幕営地で、俺はキャンプツーリングの喜びを味わった。20数年のブランクを経てバイクに復活し、キャンプツーリングをするようになって、本当に良かった。幸せな感じだ。故に感謝。○んなんさんに感謝。俺に飛の崩れの存在を知らしめてくれたからだ。

行きと帰りに通った道も最高だった。これでもかってくらい、美しい景色が連続した。東北はスケールがでかい。次回東北をツーリングするときは、数日かけて、のんびり回りたいものだ。



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