2007年10月13日(土)、14日(日)
秋の阿武隈高地から塩原

目的地 いわき、棚倉あたりの阿武隈高地
ルート
1日目 :  環七→国道6号→県道38号→国道349号→県道27号→県道242号→国道289号→鹿角平観光牧場
→国道289号→県道60号→県道72号→県道182号→国道4号→国道400号→塩原グリーンビレッジ
2日目 :  塩原グリーンビレッジ→国道400号→県道30号→国道4号→環七
走行距離 467km

会社で3月に始まったお祭り騒ぎ、あるいは狂気の沙汰に区切りがついた。長く苦しい戦いだった。特に8月、9月は土日を返上して、日本全国を駆け回り、自らに課せられたタスク群と取っ組み合いの格闘を展開した。次から次へと襲い掛かる問題を、いなし、はじき返し、無力化していった。そして予定通り、いや当たり前だ。しごく当然!俺は心の中でガッツポーズをとり、勝利の雄たけびを上げたのだ。俺は達成感を得、1.5ヶ月ぶりに週末を取り戻したのである。

体の疲労は10月に入ってからの2週間でどうにか回復してきた。次は精神のケアだ。約2ヶ月ぶりのツーリングな訳だが、俺は福島県のいわきや棚倉あたりの阿武隈高地を走ることにした。おニューのライディングジャケットを着て、秋の高原を走り回るのだ。そして温泉に入ってキャンプするのだ。


5時30分起床。支度とキャンプ道具の積載を一時間で終え、俺は先週NAPSで購入したYELLOW CORNの冬用ライディングジャケットをユニクロの長袖Tシャツの上に羽織った。冬用ではまだ暑いかなと危惧したが、今日から寒気が入り込んでいるらしく、早朝の外気は思いの他冷えている。ジーンズの下に股引を履いたのは正解だった。

俺はCB400SSのチョークを引いてエンジンをかけ、ヘルメットとグローブを装着し暖気はせずに出発した。我が家の周辺は住宅密集地なので、早朝の暖気運転は気がひけるのだ。低速で周りに民家がない場所まで移動し、暖気しながら荷物の結束をチャックした。毎度おなじみの手順てわけだ。

荷物の結束はOK。エンジンの回転数も安定してきた。俺はタバコを携帯灰皿でもみ消した。さあ、出発だ。

環七から国道6号を左折し、水戸方面を目指す。松戸や柏といった駅の周辺では既に混雑が始まっているが、俺はすり抜けずにおとなしく進んだ。利根川を渡って茨城県に入り、取手駅を超えると車が減り、走行がスムーズになって来た。出発から1時間30分。牛久のあたりでコンビニに入り、一回目のトイレ休憩と朝食だ。

今日は朝から薄い雲が空を覆っていたが、雲の隙間から見える青空の面積が段々広がってきた。しかし、思いの他寒い。もう冬用のライディングジャケットでぜんぜんOKだ。今日は春夏用の短いレザーグローブをしてきたので、走ってるとジャケットの袖から冷気が進入し、それが体温を奪う。しかしだ。準備万端な俺は冬用のレザーグローブも内緒で振り分けバッグに忍ばせてある。(誰に内緒なんだよ)
俺はおもむろに冬用のグローブを装着し、ジャケットの袖をグローブの裾でカバーして出発したのだった。

土浦市、石岡市、小美玉市を順調に走りぬけ、水戸バイパスで距離を稼いだ。那珂川を渡ってひたちなか市に入り、ちょっと走って市毛十字路を左折。と思ったら、通り過ぎてしまった。俺は次の信号で右折車線からUターンし、市毛十字路を右折して県道38号に入ったのである。そう言えば、去年の11月に袋田の滝に行ったときも、この場所で全く同じことやったのを思い出した。人間の業ってやつだろうか。(違うと思うけど)
じゃ、この場所に人知の及ばない力が働いてるってことか。(それも違うと思うよ)
ただ単に、俺が注意力散漫ってことなのか。(OK!)

県道38号を2キロほど走り、国道349号を右折。暫く走ると建物や信号が減り、代わりに緑が増えて一気に田舎の景色になって来た。久しぶりに味わうツーリングの空気だ。刈り入れが終わった田んぼ、なだらかなシルエットの里山、畑仕事の老人。そういった風景の中を、俺は上機嫌でCB400SSを走らせた。俺の体内では蓄積された疲労素やストレスといったものが、何か他の物質に変化を遂げているはずだ。

常陸太田市の辺りで俺はガソリンスタンドに入り、ガソリンタンクを満タンにして国道349号をさらに北上したのである。

11時を過ぎ、昼飯を食う場所を探しながら国道349号を走り、県境を越えて福島県矢祭町に入る。少し走ると国道349号は国道118号と合流し、国道349号はひがしだて駅の辺りで右折することになる。予定では右折して国道349号を行くつもりでいたのだが、俺は国道118号を直進し、この先にあるはずの道の駅「はなわ」を目指した。そこで昼食を取ることにしたのだ。国道349号の分岐から10kmほど走ると、左側に道の駅「はなわ」の看板が見えて来た。

俺はCB400SSを駐車場の邪魔にならない場所に停めてエンジンを停止した。メットとグローブを脱ぎ、バイクをおりて道の駅のレストランに入った。高速道路のサービスエリアにあるようなレストランだ。俺は空いている店内の窓際の席に座り、ビーフカレーを注文した。ツーリングマップルでルートをチェックしてたらビーフカレーが運ばれて来た。結構なボリュームだ。

道の駅「はなわ」を左に出て橋を超え、すぐの信号を右折して県道27号に入る。県道27号をちょっとだけ走ると県道242号の分岐があるので左折。県道242号はこれまたちょっとだけ走ると道なりに国道289号になる。この辺りは既に阿武隈高地だ。

周辺のなだらかな山を縫うように国道289号は走る。徐々に高度を上げながら山間のワインディングを走り抜け、「鹿角平観光牧場」の案内板に従って左折。

12時20分。出発から218km走って鹿角平観光牧場に到着だ。別にここが目的地というわけでもないのだが、この開放的な風景はどうだ。(○○○○さんの、○○県の北海道ってここじゃないかなあ)Webでこの場所を発見し、どうしても一度訪れてみたかったのだ。俺は道端に座って広大な景色をながめ、のんびりと一服したのだった。

鹿角平観光牧場には天文台があり、キャンプもできる。車は乗り入れできないが、広大な敷地のどこでもキャンプできるらしい。ここでキャンプすることも考えていたのだが、今日は地元の子供たちのイベント(バーベキュー大会かなんか)があるようなので、やめにしたのだった。

鹿角平観光牧場を後にして国道289号を戻る。暫く走ると国道289号は右折になるので、右折して棚倉方面に向かう。ここを直進すると、来る時に使った県道242号だ。国道118号と合流して暫く走り、県道60号を左折して黒磯方面に向かう。県道60号は山間を走る、快適な道だ。程よいワインディングと美しい風景。そして笑っちゃうほど車が走っていない。たまーに、対向車とすれ違うくらいだ。俺はのんびりとCB400SSを走らせた。俺はツーリングでこういう県道を走ると、すごーく嬉しくなっちゃうのだ。

県道60号は福島県から栃木県那須町に入ると国道294号と合流し、またすぐに右に分岐する。国道294号の分岐から5km程走り、県道72号を左折。また5km程走り、県道182号を右折して3〜4km走ると、那須塩原駅の辺りで国道4号に出るので左折。国道4号から国道400号を右折して西那須野塩原インター、ホウライ牧場を越えて会津東街道に入ったのだった。

15時20分。出発から309km走って本日の宿営地、塩原グリーンビレッジに到着だ。俺は受付でバイクサイトの空きを確認して、料金1,150円(去年来たときは1,050円だったような・・・)を払い、宿泊者名簿に記入して指定されたサイトに向かったのである。

指定された山サイト1にCB400SSを停め、キャンプ道具を下ろしていると奥のサイトのカップルが「こんにちは」と気持ち良く挨拶しながら通り過ぎていった。バイクサイトの先客はこのカップル一組だけだ。テントがあって人もいるのだがバイクがない。不思議だ。

手早く設営して一服し、場内の日帰り入浴施設「福の湯」に温泉に入りに行く。俺は福の湯の受付で350円払って入場した。脱衣所に入ってライディングジャケット、Tシャツ、ジーンズ、股引(この時期の股引はちょっと恥ずかしい)、パンツを脱いでタオルを持ち、あたかもプールに向かうちびっ子のように喜び勇んで浴室に突進したのである。

福の湯の泉質はナトリウム・カルシウム塩化物・炭酸水素塩・硫酸塩素泉。100%天然温泉で、神経痛、冷え症、きりきず、やけど、慢性婦人病、動脈硬化症などに効くらしい。俺はゆっくりと、内風呂、露天風呂、サウナを満喫した。寒いときの温泉は最高だ。

サイトに戻ると、となりにテントがひとつ増えている。人もいないし、バイクもないので設営して買出しにでも出かけているのだろう。一番奥のカップルのテントはモンベルのムーンライト3型、おとなりさんのテントはシェラのハーフムーン、俺のテントが小川のステイシーだ。これでダンロップのR-224でもあれば、人気ツーリングテントの品評会だ。それはさておき、とりあえずビールだ。俺は売店で買った一番絞りのプルリングを引き、風呂上りのビールを楽しんだのである。

ビールを飲んで一服したら、辺りが暗くなって来た。まだ夕方の5時過ぎだが、大分日が落ちるのが早まって来ているのだ。思うに、このキャンプ場が山間部の渓谷沿いに位置すということも、辺りが暗くなる早さと無関係ではないに違いない。俺はキャンドルランタンに火をいれ、宴会を開始することにした。カップの日本酒をあけ、ビーフジャーキーをつまみながら料理の支度をした。

さあ、レシピの時間だ。 奥様。 今日の料理はなんちゃってイタリアンでございます。どうぞメモのご用意を。まず100円ショップのフライパンにオリーブオイルを入れてよく熱し、ベーコンを炒める。火を弱くして輪切りにしたトマトをベーコンの上に乗せ、クレージーソルトを振り掛け、ふたをして蒸し焼きにする。トマトがシナシナになったらとろけるチーズを乗せ、再びふたをして蒸し焼きにする。チーズがとけたら、バジルをふりかければ、簡単で超美味な、なんちゃってイタリアンの完成だ。

早速食べてみる。よっしゃー!!いや、真面目にうまい。ふざけんなよ!っつうくらいうまい。(なにがだよ)カリカリになったベーコンとしなしなのトマト、そしてとろけたチーズが絶妙なバランス。カロリーが高そうなところが難点だが、酒のつまみには最高だ。ベーコンの油と、トマトからでた水分が混ざった汁がこれまたものすげーうまい。ワインを足して塩コショウで味を調えれば、デリーシャスなソースが出来上がるに違いない。

なんちゃってイタリアンを食べながら酒を飲み、幸せな気分にひたってたら、お隣さんがAfrica Twinに乗って帰って来た。そしてタオルを片手に温泉に出かけていった。俺のテントの前を通りすぎるとき、「こんばんは」と気持ちよく挨拶してくれた。俺も「こんばんは」と気持ちよく挨拶した。

食事を終えて後片付けをし、コーヒーを入れて一服。バーボンのポケット瓶をちびちびやってたら、椅子に座ったまま暫く寝てしまい、大分体が冷えてきた。俺は歯を磨いてキャンドルランタンの火を吹き消し、テーブルと椅子をテントの全室にしまってテントの中に入った。夜7時30分の時点で気温は10度。シュラフカバーや、ライナーを使わなくても全然寒くない。俺はアルファライト700だけで快適に眠りに落ちたのだった。

朝6時。
テントの中を照らす柔らかい朝の光で目を覚ました。昨日は8時前に寝たので、実に10時間も眠っていたことになる。俺はすっきりと覚醒し、テントの中を片付けて外に出た。そしてすがすがしい空気を味わったのである。

トイレに行って歯を磨き、ロールパンとコーヒーの朝食を取って一服。お隣さんや、奥のカップルはまだテントの中だ。俺は静かで清らかな山間の朝を楽しんだ。

さて、撤収だ。小物をスタッフバッグに分けて、頭陀袋に押し込んだ。テントはたたまずにまるめてステイシーに付属の袋に押し込み、ポールとペグは頭陀袋に入れた。ステイシーのフライとインナーテントは、ポールやペグを一緒に入れなければ、無造作に突っ込んでも付属の袋にいい感じで収まるのだ。フライとインナーテントは家に帰ってから干すつもりだ。

40分で撤収作業を終え、荷物を後部シートと荷台に括りつけた。ごみや忘れ物がないかチェックして、エンジンをスタート。迷惑になってはいけないので暖気もそこそこにサイトを後にした。

ゴミ捨て場でゴミを分別して捨て、宿泊者カードを受けつけのかごに返した。一応トイレを済ませ、8時に塩原グリーンビレッジを出発したのだった。

塩原グリーンビレッジを後にして朝の国道400号を走る。この渓谷沿いの国道は沿道の樹林も美しく、早朝に走るとすごーく気持ちがいい。今回はこの空気を味わう為に、わざわざ福島県のいわきや棚倉の辺りから、塩原までキャンプしに来たようなものだ。

国道400号から、道の駅「湯の香しおばら」の先の信号を右折して県道30号に入る。この道は俺のお気に入りの県道の一つだ。俺は県道30号みたいに空いていて素朴な県道が好きなのだ。西那須野塩原インターから東北道で帰ろうかとも考えたが、やめにした。まだ時間が早いし、お金がもったいないし、下道をとことこ走ったほうが楽しいからだ。

県道30号から矢板の辺りで国道4号に合流。まだ時間が早いので国道4号もスムーズに流れている。宇都宮から小山あたりまでは、ほとんど高速道路のようなバイパスを快調に走る。途中で一回給油してガソリンタンクを満タンにし、スタンドを出たところにCB400SSを停めて一服。春日部あたりから車が多くなってきたが、まあ順調に走り、11時10分、塩原グリーンビレッジを出発してから158km、昨日の朝自宅を出発してから467km走って無事に帰還したのだった。


2ヶ月ぶりのツーリングアンドキャンプは、俺の大好きな福島県の阿武隈高地を走り回り、これまた大好きな栃木県の塩原でキャンプした。久々故の楽しさを満喫し、おかげで仕事の疲れも癒されたはずだ。

塩原グリーンビレッジは温泉が良くて、バイクサイトには騒ぐキャンパーがいないからお気に入りなのだが、サイトからトイレが遠いのが難点だ。俺はトイレが近いので寝る前はこれでもかっていうくらい何回もトイレに行くので、それだけで疲れちゃうのだ。炊事場も遠いのだが、俺はキャンプ場の炊事場はほとんど使わないのでこちらは問題ない。

鹿角平観光牧場はWebで見たとおり、開放感あふれるところだった。いつかキャンプしよ。


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